長時間停車の後、16時28分、静内を発車した。
さすがサラブレッド銀座と呼ばれるだけあって、
右も左も牧場である。サイロが目立つ。
牛はいない。
馬ばかりである。
馬を驚かせてはいけないだろうから、
やはり汽笛は鳴らさないのだろうか。

 30分ほど走って本桐に到着し、13分停車。
こういった末端終着駅型のローカル線であれば、
何となく想像がつくのだが、
この本桐から先、終点・様似も含めて
行き違い設備がないのではなかろうか。
運転士も退屈そうで、外に出て深呼吸をしている。
あくびをするわけにもいかないだろう。
ご苦労様である。
この本桐では4人が下車して、
いよいよ地元のおばちゃんたちだけが乗客となった。
旅人どころか男はとうとうぼくだけである。
運転士も男だけど。

 上り列車が到着して、定刻に発車。
相変わらず右も左も牧場であるが、日は傾いて夕暮れとなった。
これもまた幻想的。
海岸部にはなかった雪に再び出会う。
白い雪が青く見え始めるから不思議に思える。

 本桐から20分ほどで浦河に到着する。
いきなり民家が建て込んでくるから少々戸惑うが、
日高支庁の最寄り駅である。
広い構内に片面だけのぽつんとしたホームを離れ、
港湾部を臨みながらゆっくりと走る。
さすがにこれまでほど人口密度が低くないせいか、
3kmごとに駅がある。
1つ1つ丁寧に停まってドアを開けるが、
車内に動きはなく、少し寂しい気持ちさえする。

 まもなく海岸に出る。
砂浜の上に線路が敷かれているのは滅多にない光景で、
日高名物の干し昆布に手が届きそうである。
本当に海とは切っても切れぬ間柄になっているようで、
漁師の家の裏側を突っ切ることを除けば、
札沼線と石狩川の関係に通じるものがある。
グラデーションのかかった幻想的な夕焼けを背に、
着実に海岸線をたどっていく。
眼前に雪を抱いた日高山脈が見え始めた。
ピネシリ山のようだ。
なんと雄大な眺めだろうか。
あの山脈の切れ目、、海に落ちるところが襟裳岬である。
その岬に達することなく、列車は終着駅・様似に到着する。

 苫小牧からかかること3時間44分。
下車したのはぼく以外で一人。
その乗客のおばちゃんも、だんなと思しき人のトラックで
足早に駅から消え去った。
襟裳岬方面への観光客で賑わう様子も感じられない。

 折り返し苫小牧行となった列車には
20数名の高校生の姿があった。
誰が利用するのかと思っていたが、
彼らを迎えに来ていたのである。
通学という大切な日常の一部を支え、
健気に走り続けてきたということになる。

 ローカル線の末端側とは思えないような賑わいを見せながら、
一駅一駅と彼らの最寄り駅に停車して
送り届けていくのであった。
最深部の終着駅には、発車を待つ単行ディーゼルカー。
空の青さに感心してしまった。



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