日高本線を乗りつぶして苫小牧まで戻り、
普通列車と快速電車を乗り継いで札幌駅に着く。
22時30分過ぎの札幌駅7番線。
発車まで30分近くもあるというのに
たくさんの乗客の列ができていた。

 22時54分頃、轟然とエンジン音を響かせながら入線してきたのは
今夜の宿となる23時02分発・稚内行特急“利尻”である。
短い4両編成のうち、B寝台車が1両連結されている。
本来ならディーゼルカーの間に寝台客車を挟むことなど
考えないものであるが、札幌から稚内、釧路、網走などの各都市へは
いまだ夜行需要が根強く、気動車化される折に寝台車だけが
残されることとなったわけである。

 先頭車両の貫通扉には“利尻”のマークが輝く。
利尻富士を描いたマークは最北を目指す列車にふさわしいもの。
ホームの電光掲示板には“特急 利尻 23:02稚内”とある。
はるか最果てへの想いを胸に乗り込む人たちがいることだろう。
その人たちに紛れてスーツ姿のサラリーマンが
4号車自由席に乗り込んでいく。
帰宅列車として利用する人が多いのみたいだ。
旭川までは事実上最終列車としての役割も担うため、
新千歳空港からの快速エアポートを
乗り継いできた人も多いはずである。
ドアの脇にエンブレムとロゴが入り独自の雰囲気をかもし出す
3号車の寝台車に乗り込む。

 寝台車に乗り込んだのはいいが、
隣の4号車が自由席であるためにこちらにまであふれて
3号車のトイレの前に座り込んでいる人がいるのはよくない。
寝台車はこれからゆっくりしたい、ゆっくり寝たいという人のための車両。
自由席利用の観光客はほとんどいないようであるから、
帰宅途中のサラリーマンが占拠しているとみえる。
どうにもトイレ・洗面所が使いづらいとあっては、
わざわざ寝台料金を支払った意味がなくなってしまう。
利用者側のモラルを問われる場面であろうか。

 23時03分、定刻に発車する。
機関車牽引ではなく、特急型ディーゼルカーの間に挟んであるから、
いたってスムーズ。ガクンという発車時の衝撃はもちろんない。
非常に滑らかなすべり出しであるし、加速も勢いがある。
ディーゼルカーの間に挟むことでどれだけ乗り心地が変わるのかと
興味があったが、これほどよいとは思わなかった。
まさしく静寂そのもの、乗り心地は抜群にいい。

 江別でサラリーマンと学生を10人ぐらい降ろした後、
岩見沢では大量の下車があった。
寝台車にも1人乗車があった模様。
入口のデッキで車内改札が行われた。
寝台車内の静寂を保つために、手早くチェックを済ませているようだ。
札幌でも発車前に寝台車と指定席は改札を済ませていった。
美唄で数人、砂川でも10人ほどが下車。
ここまでで乗車のほうは数えるくらいしかない。車内は減る一方である。
3号車の寝台車だけは変化がない様子だ。

 車窓から見る石狩平野はなにかしら光がつづき、
闇に包まれるのは滝川の後の深川を出てからになる。
カムイコタンのトンネル区間にかかると
車内に大きなエンジン音が響いてくる。
外気温がかなり低いのか、窓ガラスが曇ってきた。
3号車は電源を自車床下のディーゼル発電機から取っているが、
さほど気にならない。
まもなく旭川に到着する。
函館本線内の各停車駅で通勤客が下車していった結果、
自由席にも余裕ができていた。

 午前1時ちょうどに旭川駅に到着。
20人ぐらいが自由席から下車して、
最終列車としての役割はここで終わる。
ホームの自動販売機でドリンクを購入しようとする人たちが、
自由席車からも指定席車からも出てくる。
寝台車内は完全に眠りについているようだ。
深夜の旭川駅構内には、眠りに就いた普通電車以外停まっていない。
すると、網走方から2灯のヘッドライトが現れた。
どうやら石北本線の貨物列車のようである。
貨物列車は昼も夜も関係ない。
そんな旭川駅に、特急利尻は20分停車する。

石北本線の貨物列車が通り過ぎると雪が降り始めた。
道路の凍結が恐ろしい寒冷地において、鉄道は特殊な需要を持つ。
それが、広大な北海道の主要都市間輸送ともなれば顕著に現れる。
高速バスでは無理な話なのである。

 20分停車の間に車内の空気は一変した。
観光地への夜行列車に変身した<利尻>は、
午前1時20分、定刻に旭川を発車。
眠りについた街を高架線から見下ろしながら北上する。
旭川発車直後に座席車も減光された。
いよいよ夜行列車らしくなる。
旭川運転所構内では、スーパーホワイトアローが眠っていた。
深夜といっても宗谷本線内の停車駅は多く、
和寒から豊富までの各駅は夜間の駅員配置がないので、
車掌は切符の回収も行わなければならない。
そんな安全輸送を守る車掌に敬意をもちながら自分の寝台に潜る。



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北辺の最終列車
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