夜行特急<まりも> A

 2時40分の新得では僚友の上り特急<まりも>とすれ違う。
石勝線・根室本線内は<まりも>運転時間帯に
人員配置駅は帯広と釧路しかない。
追分、新得、池田、浦幌、白糠の駅は車掌が切符を回収する。
8両編成までは1人乗務らしいので、
夜行列車ともなると大変なことこの上ないだろう。

 3時を過ぎてまばゆい街の灯が見えてきた。
帯広である。自由席を中心に40〜50人くらいが下車しただろうか。
寝台車には動きがなかった。
駅前には何台ものタクシーが客待ちをしていた。

 帯広での大量下車を踏まえて車内を散策してみることにした。
ただ、寝ている人には当然のことながら配慮はするのだが、
その寝ている人は寝台車にしか見当たらない。
指定席はがらんとしている。乗客ゼロの車両もあった。
残りは自由席であるが、指定席の状況を見てもわかるように、
釧路への乗客はほとんど寝台利用である。
帯広や新得のような途中駅で下車する人は、
寝過ごさないようにしているのか、寝台料金を払うほどでもないのか
わからないが、座席利用なのである。
全盛期の夜行列車がこうであったという。

 帯広を出ると、再び明かりはなくなり、漆黒の闇が続く。
この列車は1号車に女性専用席がある。
痴漢に間違えられても困るのでぼくは行かない。

 3号車の寝台車には上下2段ずつ4席あり、
カーテンは他がグレー系なのに対してベージュになっている。
各寝台車に2つある洗面台の間には仕切りが設けられ、
鏡も洒落た丸形になるなど面目を一新している。

 かつては客車急行として運転されていた<まりも>であるから
少々残念ではある。
客車列車らしい轍が聞こえていたならと思う。
それでも気動車化されたことで、
廃止の心配がほとんどなくなったのは好ましいことだ。

 池田の駅が近づいてきたようなので、寝ることにしよう。
新得までの間に寝ながら、帯広の手前で起きてしまったのは
もったいなくもある。
どうせなら夜明けの頃に起きるのがよかったが・・・。
どうもグリーン車のドリンクサービスでコーヒーを飲みすぎたらしい。
ここのところ、グリーン車に乗りすぎたかもしれない、
と自分に不相応な座席を少し恨めしく思った。

 どうせならお座敷にしてくれたほうが、
農耕民族の日本人には合うのでは?とも思うのだった。



 おはよう放送で目が覚めた。
時刻は5時20分をまわったところ。
音別を過ぎて右手には太平洋が現れていた。
上段寝台から下りようと思ったが、下段の人が通路の椅子を
占領していて、下りても自分の場所がないかもしれない。
とりあえず荷物だけ整理しておく。

 庶路を過ぎたところで「あと20分で終点・釧路」と、
放送が流れてきた。
洗面所やトイレに行く人が増え始めて車内がにわかに動き出す。
いつのまにか海岸線は視界から消え、
コンテナヤードを通過して釧路川を渡ると
終点・釧路駅1番線に定刻の5時50分到着した。

 道東の朝は早く、美しい。
誰よりも早く朝日を見られる上に、空気が澄んでいるから
目玉焼きのような太陽が空へと昇っていくのが見られる。
下車客のほとんどは寝台車からであった。

 稚内行きの<利尻>、網走行きの<オホーツク>と違って
寝台車が2両連結されているのは、
それだけ寝台の需要が大きいこと、すなわち翌朝もきちんと
活動できるようにしたいと思う人が多いことの証でもある。
夏季輸送期間中は、寝台料金の値下げも行なわれ、
JR北海道の意気込みと、それに呼応する人たちがいることが
うかがえる。

 終着駅ということで否応なしに乗客は下車させられてしまう。
降りた人たちの半分は根室方面へ、
残りの半分のうち数名が釧網本線で標茶方面へ。

 根室方面へは夏のシーズンに限り、
<まりも>は快速列車として延長運転される。
根室方面へ乗り継ぐ人たちが多いのだから、
週末だけ延長運転するなど、もっと運転日数を増やしてもよさそうだ。
だが釧路〜根室間の線路有効長の関係などから
運転には面倒な部分も多いという。
便利な列車ほど不都合な部分が目立ってしまうのは皮肉である。

 根室方面、標茶方面への流れに逆流し、
ぼくは根室本線・滝川行きの普通列車に乗って、
いま来た路を戻ることにする。



札幌近郊

紺碧の空と神々に魅せられて

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