富良野を出ると北に進路をとる。
右手には十勝岳と噴煙を望めるはずだが、今日は雲がかかっている。
十勝平野は晴れていたのに、その北側は晴れとも曇りとも判別しがたい
天気である。

 富良野線はどちらかといえばローカル線の部類に入るのだが、
美瑛・富良野という観光資源に恵まれており、旅行者もよく見かける。
ただ、この時期はそんな観光客は温泉か海の幸を求めて別の土地へ
行ってしまう。したがって富良野線は冬眠中だと思っている。

 だがそんな時期だからこそ北海道はいい。
真っ白に雪化粧した山々がいたるところにある。内地だとそれなりに
標高が高くなければ植生が変化せずに、スポーツ刈りの頭みたいな
山々が多いのに、北海道の山は同じ標高でも裾まで真っ白である。

 ただ、こんなことを考えると旅行者は勝手だと思う。
わらぶき屋根がトタンに変わると、昔は田舎らしくて風情があったのに
と嘆いてしまう。その家で生活する人の都合など知らぬ顔ではないか。
ぼくに至っては、雪で農業ができないというのに、その雪原を見て
喜ぶから、地元の人にぶん殴られかねない。

 学田、鹿討、中富良野、西中、上富良野、美馬牛、美瑛と停まるうちに
確実に列車は乗客を集めた。1両のワンマンカーでは満員になって
しまったので、横座りのロングシートに陣取っていたぼくは風景など
見られなくなった。こういうときは立っていたほうがよい。
目の前に乗ってきたおばあさんに、席を譲ろうと立ち上がった。

 すると、
「大丈夫ですよ。こう見えてもまだ老いぼれてないのよ。ありがとうね。」
という。ぼくがカメラマンか旅人にでも見えたのか、
「どこから来たの?」
と訊かれたので、九州からと答える。驚いた様子で、
「九州はいいところよねぇ。雪もなくて。食べ物も味が繊細で美味しいし。」
北海道の人らしい意見である。

 しかし、九州は何と言っても台風が多い。
去年は福岡でさえ、ひどい台風が連続して上陸した。その話をすると
納得した様子で、「お互い大変だったわね。」といった具合。
そのおばあさんは千代ヶ丘で降りていった。

 その先は西聖和、西神楽、西瑞穂、西御料と西が4つ続く。
集落の西側を走っているのだろうか。先ほどのおばあさんとの会話を
聞いていた隣の人が「写真撮って回ってるんですか?」
と話しかけてきた。その女性は斜里の出身らしく、オホーツク海には
明日行く旨を告げると、「北浜駅で降りるのをおすすめします。」
と言ってくれた。考えておこう。

 途中下車は、区間だけ決めておいて、その中でいいなと思った駅に
突発的に飛び降りるのが好きだ。そういう楽しみを残しておきたい。
緑ヶ丘、神楽岡と停まる。次は終点の旭川である。席を譲り損ねた上に、
隣の人と話していたので車窓はそんなに楽しめなかった。

 しかし、車窓を眺めるだけが旅ではない。これもまた旅である。



狩勝峠を越えて

終着駅へ行ってきます

神居古潭

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富良野線の旅
これもまた旅
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