快速<狩勝>1両なので軽快に走る。
柏林台、西帯広、大成を通過して芽室に着く。
ここでスーツ姿の人たちが降りていく。
何かの工場でもあるのだろうか。
芽室を出ると御影、羽帯と通過して、
十勝清水で帯広行の<スーパーとかち1号>
とすれ違う。

 十勝平野は日本離れした大規模な農場が多く、
畝が長い。それが単調に続くので胸が広々としてくる
とともに若干退屈でもある。しかし、いまは冬も終わりに
近いとはいえ雪に覆われているから、ひたすら雪原が
続くのみである。

 左前方に続くのは日高山脈である。
標高2000m超の幌尻岳が最高峰だが、その峰々は
1500〜2000mでずらりと並び、本州と比べて緯度も
北寄りだから氷河地形であるカールが頂を鋭く削っている。
なかなか見応えがあるなと思う。

 広い十勝平野が尽きると10時13分、新得に着く。
峠の麓の清楚な駅である。この新得からは列車の由来
ともなる狩勝峠にかかるので、線路は大きくカーブしながら
S字型に斜面を上って行く。大雪山の長い裾と十勝平野が
見えるはずだが、視界が悪くなった。雲の中に入って
しまったのかもしれない。やはり山の天気は
変わりやすいらしい。少々残念だ。

 いま走っている線路は昭和41年に開通した新線である。
まもなく長い新狩勝トンネルに入って石狩側の落合に
抜けるのだが、以前の線路は4km北にある標高726mの
狩勝峠のすぐ下を1km足らずのトンネルで抜けていた。
この新線建設によって根室本線最大の障害とされた
狩勝越えの急勾配はなくなり、輸送力が向上したのだが、
その代償として国鉄の車窓随一とされた眺望は失われた。
ここの狩勝峠、信州の姨捨、霧島の矢岳越えを合わせて
日本三大車窓と呼ばれていた。

 20分以上走ってそのまま落合を通過。
小さな集落らしい。すでに南富良野町に入っており、
10時53分幾寅着。映画“鉄道員”で有名になった駅なので、
人が乗ってこないのではないかと思っていたが、意外なほどに
ホームには人がいた。こう言っては失礼かと思うが町も少し
大きいように思う。映画の舞台となる土地が人口希薄と
決め付けるのはよくないらしい。

 幾寅を発車して東鹿越を通過する頃には広大な雪原が
見え始めた。こんな山奥に?と思うほどにだだっ広く、
人影はおろか人跡もない。何もない場所など考えがたいが、
そこを跨ぐ赤い道路橋があったおかげで人造湖の金山湖だと
気付いた。見事に結氷している。素晴らしい眺めだ。
金山駅を過ぎて、その金山ダムを鉄橋で渡るとトンネルに入る。

 下金山を通過して、金山ダムから流れ出す空知川が
寄り添うようになると山部に停車。ここですれ違う列車は、
なんと今朝発車した釧路への普通列車だった。
<狩勝>の終点である滝川から釧路までを走りぬく
普通列車である。釧路到着時刻は17時23分となっており、
滝川からの運転時間は7時間と45分。この<狩勝>は
6時間35分だからなんとも長距離長時間である。

 山部を発車するとすでに富良野盆地に入っており、
11時32分、富良野着。ラベンダー畑で有名な土地だが、
冬という季節を考えればそういったものはない。
おかげで観光客に会うこともなく、旅人としては
羽を広げっぱなしでうれしくもなる。冬の北海道にこそ
その素晴らしさがあると思ってここまでやってきたのは
正解だった。

 富良野からは富良野線に乗る。





紺碧の空と神々に魅せられて

これもまた旅

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快速<狩勝> A
狩勝峠を越えて
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