どこかの鉄橋を渡ったような音で目を開ける。

 時刻は5時半前。
富山市東部を流れる常願寺川であった。もうJR西日本のエリアというか、
北陸なのである。5時28分、富山に停車。数人が降りていく。15分後に
金沢行の寝台特急<北陸>、その15分後に同じく金沢行の急行<能登>が
追いかけてきているから、朝から富山駅はにぎわいそうだ。

 神通川を渡って呉羽、小杉、越中大門を通過して高岡へ。
この辺りは砺波平野で、散居村がある。散居の各家は「カイニョ」と称する
屋敷林を備え、奇妙な風景である。これは防風や外から屋敷内が見えない
ようにする目隠しのためだといわれている。
隣接する家がないのは火事から守るためとも思える。

 高岡からは倶利伽羅峠に向けて走る。
なんとも響きのいい峠だが、あっけなく通過してしまい、平地へ下りはじめると
金沢で下車する人が準備を始めた。線路脇に橋脚が現れてこちらも高架橋に
上がる。並行するのは北陸新幹線の路盤のようである。

 6時21分、金沢到着。
各車両からパラパラ降りていく。さすがに北陸一の観光商業都市である。
けっこう乗客が減ってしまったように思うが、残った乗客のために朝食を
提供する車内販売が乗り込んできた。しかし、どうにも腹が空いていないので
購買意欲も湧かなかった。

 金沢を出ると平野部をひたすら走る。
雪は山だけのものとなり、茅ばかりの冬景色が広がっている。
否、北海道での話だから、もはや春間近の景色といったほうがいい。
もしかしたらふきのとうが芽を出しているかもしれない。

 6時50分、加賀温泉着。
ここで後続の特急<しらさぎ2号>名古屋行に追い抜かれる。
なんだかのんびりしていていいのだが、いかにも自分は急いでいない
と言うようで暇人に思われるかもしれない。実際急いでいないからいいのだが
こんな気持ちの持ち方一つで、そのときの旅の印象も変わるのだから
また同じ場所をめぐりたいと思っても当然である。
次の印象に期待したいと思えるからだ。

 加賀温泉を出て、福井県に入ると7時23分、福井着。
さらに南下して武生を過ぎる頃には周囲に山が迫ってきた。今庄を過ぎて
国道や高速道路が近づいてくれば北陸トンネルに入る。
抜けたら8時を回って敦賀に停車。

 いよいよ近畿と思いながら小浜線と分かれ、
北陸本線の上下線も離れてこちらはループ線を走る。右にカーブを切ること
360度。福井県南部に連なる山々が後方に見えたり、左側に見えたりする。
方位磁針を持っていれば針が1回転するから不思議に思えるだろう。

 トンネルで抜けて上下線が入れ替わると新疋田で合流し、深坂トンネルで
滋賀県に入る。スピードが落ちてついには近江塩津駅の待避線に停車した。
ここでも後続の特急<サンダーバード6号>に道を譲る。もはや対大阪への
使命を果たしているのかは疑問が残るが、これも時代の流れなのだろうか。
その一言で片付けたくはないのだが・・・。

 運転停車の近江塩津を発車して北陸本線と分かれると
湖西線の築堤と高架橋の上を快走する。雨が降り出してきた。
高台から見下ろす琵琶湖は少しも青くない。昨日美しい大沼と小沼を
見ているだけに、その印象の落差は雲泥の差である。
ただ、雲のかかる比叡の山々は荘厳に見える。
琵琶湖へと落ち込むこの急斜面はいつ見ても好きだと思う。

 B寝台では車窓を眺めながらくつろいでいる人もいれば、
車内販売から購入した弁当を広げる人もいる。目的地まで思い思いの時間を
過ごすのも、はるかなる汽車旅の1シーンといえる。
皆はどんなことを考えているのだろうか。

 新幹線のような高架橋を走って西大津を通過し、山科で東海道本線に
合流したら9時23分に京都着。降りる人がまたまたけっこういて、車内は
いっそう静かになった。京阪神の複々線に入って天王山を越えれば
新大阪に停車して新幹線に乗り継ぐと思しき人をホームへ吐き出す。

 旅の余韻を味わうようにタタンタタンと淀川を渡って、
終点の大阪駅3番線に9時57分に到着した。降りた人たちは足早に
階段へと消える。帰ってきたかと安堵したのはぼくだけだったみたいだ。



老若男女の笑顔を乗せて

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