駅そばを食べてからホームに上がる。
音威子府駅を堪能して、9時33分発の特急スーパー宗谷2号・札幌行に乗る。
天塩川の谷から6両編成の特急列車が姿を現した。
落ち着いた車内で、座席に腰掛けてから、おにぎりを食べる。
駅そば屋で買った、にぎりめし。
しっかり握ってある。コンビニなんかで買うものよりもよっぽど温かくてうまい。

 デンマーク国鉄と共同でデザインされたお洒落な外観とは裏腹に、
鋭い加速で走り始めた<スーパー宗谷>は、天塩川の谷を抜ける。
放牧地のサイロが見えはじめて、美深に着く。

 美深からはかつて国鉄美幸線が分岐していた。
“美”は美深、“幸”はオホーツク海沿岸の北見枝幸を指す。
実際は北見枝幸まで延びることはなく、途中の仁宇府までだったため、
沿線人口が希薄だったことも加わって国鉄で最も赤字が大きかった。
美幸とは名前がいいので、駅舎のてっぺんに“美幸の鐘”がある。
「美幸線の灯を絶やさぬように」との想いが込められているらしい。
列車が到着、停車中はずっと鐘が鳴っている。

 車内改札があったので、自由席特急券と最長片道切符を見せる。
経由地を見ながら「すごい切符だなぁ。」と一言もらしてくれた。
稚内駅に続いて、この切符と向かい合ってくれた2人目の鉄道マンである。
音威子府駅の駅員どのはあまり関心がなかったようだが、
それは宗谷本線が一本道だからだろうか?
旭川車掌区のチケッターが押されて、名寄到着のアナウンスが流れる。

 名寄で下車する。
改札で途中下車印をもらうが、券面を確認する様子はなかった。
一瞬でわかるものだろうか?それとも意外といい加減なのだろうか?
駅近くのスーパーに行ってから改札に戻ると、
11時43分発の旭川行普通列車はすでに停車中だった。

 旭川近郊用のマイタウン列車の表札があり、“かえで”と書いてあった。
ほとんどの座席が埋まって発車する。
道北の原生林と違って、牧歌的風景と畑ばかりが広がるのは道央らしい。
冷房がない車内で窓を全開にすると、心地よくて眠ってしまった。
風が気持ちよかったことしか覚えていない。

 いつのまにか塩狩峠を越えて、旭川の都市圏に入り、永川に停まっていた。
まもなく、最初の路線分岐駅となる新旭川に着くところだった。
このまま旭川まで乗って、旭川〜新旭川間の運賃を支払う。
駅員はなかなか対応がいい加減だった。
経由地確認もしないのは複雑だから仕方ないかもしれないが、
こちらが旭川〜新旭川の運賃を支払うと説明しているのに聞かず、
途中下車印を押そうとしたり、そのまま通れという。
200円を支払おうとする自分の意思は無関係のようだった。
忙しい駅だなとも思うけれど。

 駅前をうろついた後、旭川ラーメンをあきらめる。
昨日買った天重を思い出したからである。
いろいろと節約せねばならないし、先は長い。
1番線に行くと、スーパーホワイトアロー20号が停まっていた。
これから乗る特別快速<きたみ>は同一ホームからの発車となるらしい。
14時57分、その1番線の端にゆっくりと入線してきた。

 15時ちょうどにスーパーホワイトアローが発車してから5分後に発車する。
なんと特別快速でありながらワンマン運転である。
旭川の市街地を高架線で走ると、先ほどの新旭川を通過する。
1つ目の路線・宗谷本線と分かれて2つ目の石北本線に入り、
最長片道切符のルート上に戻る。

 小さな駅が多い。
それが列車本数の少なさに結びつくのだろうが、
特別快速<きたみ>に至っては、上川まで45分停車しない。
特急並である。
石狩川と絡み合いながら盆地が開けてくると上川に着く。

 上川はラーメンで町おこしをしたことでも有名であるが、
大雪山系の国定公園内にあり、層雲峡の最寄り駅でもある。
その上川を出ると、石狩山地が迫ってくる。
石狩と北見を分かつ石北峠の上り勾配にかかり、
30km先の奥白滝まで駅がない。
途中の信号場で札幌行の特急<オホーツク>とすれ違う。

 信号場を出たトンネルからエンジンの喘ぎがなくなった。
サミットを越えたのだがかなりの距離があり、
奥白滝の駅を通過したのは上川発車から25分後のことだった。

 人家の気配がまったくない山中を
川のせせらぎに添って走り、その間にエゾマツらしき木が生えている。
エゾマツなんだかトドマツなんだかアカマツなんだか本当のところわからない。
区別が付かないから、白樺に見えなくもない。

 奥白滝、上白滝、白滝、下白滝を過ぎて、遠軽に到着する。
ここから進行方向が変わる。途絶えた線路の先には旧名寄本線跡がある。
旭川〜北見の道というと、石北峠を越える石北本線か、
宗谷本線から名寄を経由する名寄本線のどちらかであった。
その結び目が遠軽ということになる。

 遠軽を出ると進行方向が変わったせいか、眠ってしまった。
夜行列車に連泊したせいだろうか?どうもいけない。
気が付くと生田原を過ぎて金華だった。
常呂と紋別を分ける常紋峠は過ぎたらしい。
前人未踏だった峠道。そこを切り開いてトンネルを掘るためにタコ部屋の
労働者や網走刑務所の囚人が駆り出されたという。
過酷な労働に耐え切れずに逃げ出した人はリンチに遭ったり、
死んだものはトンネルの内壁や土手に埋められた。
いまでも保線作業員に敬遠される峠道で
窓を全開にして、コックリコックリと眠ってしまった。

 18時25分、終点の北見に到着する。
乗継と乗換の多いこの旅で、3時間半も同じ列車に乗ることなど、
この先あるものだろうかと思う。
3分の乗換え時間で網走方面の普通列車・緑行に乗る。

 北見市内の各駅に停車しながら10人ぐらい乗客を拾って美幌に停まる。
ほとんどが下車してしまい、この地方の中心が北見にあることを実感する。
いよいよ日が沈んでしまい、真っ暗になった。
西女満別、女満別、呼人と停車しても車内に変化はない。
右に左にカーブを繰り返すようになったので、網走湖畔を走っているのだろう。
国道の灯が並ぶようになると、放送が流れて19時31分、網走に到着する。
今日の旅はここで終わりである。
駅前のビジネスホテルに入ってゆっくり休むことにしよう。



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1.音威子府

3.雨の釧路湿原

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最長片道切符の旅・1日目
2.北見峠と常紋峠
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