8月17日(水)

 列車の音で目が覚める。
5時50分に回送列車があった。起きて仕度をする。
羊蹄山に登るといっていたおじさんは、本当に4時に起きて行ってしまったらしい。
外に出ると、しま太郎が薪の上で寝ていた。
どうやら昨日はメス猫についていったばっかりに閉め出されたようだ。
気の毒なので朝飯を少し分けてやる。
せっかく待合室の中に就寝スペースがあるのにご愁傷様だ。

 曇っているが涼しい朝。
森閑とした山間の駅から今日の旅ははじまる。
6時35分発の長万部行き普通列車がやってきた。
乗客は8人のワンマンカー。こんな山間部ではしょうがないか。

 この比羅夫駅付近がサミットらしく、次のニセコまで軽やかに下っていく。
リゾート地であるニセコに着く。スキー場の案内まかりだ。
人が少ないことを逆手にとってその土地を楽しむ指向のものもあり、
それが今朝までいた“駅の宿ひらふ”である。
何がいいのかなど本当は一概にはわからないのだが、
泊まってみればわかる、というのが感想である。

 ニセコを出ると10分ほどで蘭越に着く。
昨日乗った快速ニセコライナーに、蘭越まで行くといっていたおばあさんがいた。
この辺りからでも札幌へ向かう人はいるらしい。
その蘭越で15分停車し、対向の札幌行快速ニセコライナーを待つ。
こちらは乗降客はなかったが、あちらは高校生でいっぱいだった。

 7時18分、発車。
ここから先、目名、黒松内まで人跡のまったく感じられない山道を行く。
かつて上目名という駅があったが、1日の乗降客数0人であったため廃止された。
駅間距離が非常に長く、列車はのろのろと走っていく。
有珠山が噴火した折には、室蘭本線の代替ルートとして函館本線が重宝された。
その際に行き違い設備を復活させたのが目名駅である。
それだけこの路線は長い駅間距離である。

 やがてサミットを越える。
蒸気機関車時代には難所として知られた場所ゆえに、
倶知安には機関区もあり、急行ニセコはC62形の重連で名を馳せた。
1両のディーゼルカーに30人の乗客。
比羅夫で乗って、乗客が増えたのは黒松内からだった。
やはり山中では利用者が少ないことがわかる。

 8時26分、室蘭本線の合流する長万部に到着。
途中下車印をもらう。「はい、わかりました。」の一言だけ。
たしかに稚内→肥前山口なら長万部は必ず通らねばならぬ場所。
経由地をいちいち確認する必要などないのかもしれないが、
実はいい加減なのではないだろうか?と、思ってしまう。
森駅までの自由席特急券を買ってから、
コンビニで1日たりとも欠かすことのできない乳飲料“ソフトカツゲン”を買う。

 8時58分、室蘭本線から次のランナーがやってきた。
札幌発函館行の特急<スーパー北斗2号>である。
<スーパー北斗>専用のものではなく、
<スーパーおおぞら>にも使用される車両だった。
スピードもパワーもあるが、エンジン音が気になるところ。
出力が大きいからだろうか。
ぐんぐん加速して車をどんどん追い越す。

 国道をアンダークロスして噴火湾に出る。
対岸に駒ケ岳を望めるところだが、今日は雲がかかっている。
海を沿いをたどるのでカーブが多いが、
振子機能を生かして車体を内側に倒し、減速することなく進む。
八雲に停車した後、20分ほど海岸を走れば森に着く。
穏やかなゆえに太陽光をきれいに反射している海のそば。
漁師の町らしい。



 森からは接続が悪いのでいったん函館に出て江差線に乗ることにする。



 再び森に戻ってくると、駅弁の立ち売りが出ていた。
日本一うまい駅弁と謳われ続けてきた、“いかめし”である。
前回訪れたときには、釜の調子が悪いとのことで断念した。
今回は森駅停車の特急<北斗>のドアまで行って立ち売りをしている。
470円の駅弁を買ってから、普通列車に乗り込む。
手に取ると温かかった。できたてらしい。
素朴だったが、飽きずにまた食べたくなるような味だった。
これを特急列車に積んで車内販売しないのは不思議だった。

 森から函館本線は2つに分かれる。
特急列車が走る“大沼公園経由”と、普通列車のみの“渡島砂原経由”である。
森〜七飯間は通しで乗る場合、距離の短い大沼公園経由で計算されるから
特急の走る大沼公園を経由して南下してしまえばよいのだが、
“最長”片道切符ゆえに、できるだけ妥協はしたくない。
渡島砂原経由の普通列車でたどる。

 16時20分に森駅をあとにした函館行の普通列車には乗客が10人ほど。
東森、尾白内、掛澗、渡島砂原の順に、駒ヶ岳の東側をぐるりと回る。
山の向こうが大沼公園だ。駒ケ岳の西をまっすぐ南下するのと
東側をぐるりと回るのとでは営業キロが16km違う。

 流山温泉駅で、思わず目を丸くする。
車窓に突然、東北上越新幹線の200系電車が停まっていたのだ。
廃車後に持ってこられたのだろうが、現役そのままの姿。
いまにも走り出しそうだった。

 大沼が見え始めると、右側から先ほど分岐した函館本線が現れ、大沼着。
大沼公園経由の列車との接続を図り、発車する。
大沼国定公園の中、小沼に沿ってしばらく走る。
対岸には駒ケ岳が上半分を雲に隠したまま、裾野だけを見せている。
沼ゆえにほとんど波はない。

 トンネルで山を下りて七飯に停車。このまま五稜郭まで行く。
よく考えてみたら、今日最長片道切符でたどるのは函館本線のみだ。
大幹線は長いので、ジグザグにたどると何度かお世話になる。
函館本線あっての北海道だなと痛感する。

 17時44分、五稜郭到着。途中下車印をもらう。
毎度毎度のことながら経由地の確認はしなかったが、下車印が汚くないかを
メモ紙で確認しながら丁寧に押してくれた。
切符とは向き合ってくれなくとも、持ち主のぼくとは向き合ってくれたらしい。
五稜郭タワーに向かい、史跡である五稜郭を見る。
が、すぐに日没。
2006年4月に新タワーが完成するので、日を改めて来ようと思う。
五稜郭公園を一周することすらできなかった。
夜は函館ラーメンを食べてぐっすり眠ってしまった。



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5.美瑛の丘

  江差線の旅

6.津軽海峡を越えて

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最長片道切符の旅・4日目
6.噴火湾と駒ケ岳
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