岩泉線を堪能したあと、茂市駅まで戻ってきて途中下車印をもらう。

 山田線が経由地にあることを確認した上で押してくれた。
なんと駅員としてははじめてのこと。うれしかった。
盛岡駅に自動改札が導入されることが大々的にポスターで
宣伝されているくらいだから人の手による作業が多いのだろう。
実直な鉄道マンが多いのかもしれない。素直にうれしかった。

 2番線で宮古行の普通列車を待っていると、
やってきたのは懐かしい国鉄色のディーゼルカーだった。
いよいよ古色蒼然とした雰囲気を感じる。
本当にいまが平成の世なのかとさえ思う。

 盛岡行の普通列車が到着するのを待ってから発車する。
「時間通りに発車いたしました。いつもどおりの時間です。」
という放送が流れる。どうやら到着が10分遅れていたらしく、
茂市駅でそれを定時に戻したらしい。
旅人のぼくにとっては“いつもどおり”が何なのかわからない。
地元の人たちがいつも使っている脚なのだろう。
その表現がぼくにとっては、けって新鮮に聞こえた。

 日が暮れて、これまで登って下ってを繰り返してきた
北上山地が遠ざかり、谷が開けてくると国道が寄り添ってくる。
千徳発車後に“いつもどおり”の宮古到着のアナウンスが流れると、
19時10分、終点・宮古駅へ。

 途中下車印を押してもらったが、経由地は確認してもらえなかった。
いちいち確認してくれるほうが少ないらしい。
このままでは最長片道切符がマイナスイメージになってしまう。

 宮古駅前のスーパーで惣菜を買う。
店を探して食べるには時間がない。惣菜なら土地のものもあるし、
高くつくこともない。庶民的な食事に接したいし。
そう思っていると、メカジキの切り落としがあった。
さすが三陸海岸!白ご飯と醤油、海苔も買う。
これで手巻き寿司が思う存分できる。

 駅に戻って改札をくぐり、3番線に向かう。
釜石行の普通列車はすでに停車中であった。
本当なら釜石ではなく宮古で宿をとりたかったのだが、
観光ホテルばかりで、安上がりに済ませるのが難しかった。
事実、駅前には旅館もビジネスホテルらしきものもなかった。
納得して乗り込む。

 窓の開かないキハ100形という車両であった。
夜になっているので車窓など楽しめるはずもないが、
高校生でいっぱいになり、なんだか肩身が狭い。
どんなところを走っているのかなど、もちろん漆黒の闇の中。
宮古に泊まれば朝の三陸海岸を楽しめると思っていたのに残念だ。

 各駅ごとに高校生が入れ替わる。
豊間根駅停車中には、半自動ドアの開閉ボタンを押して
遊んでいる高校生がいた。降りる人が降りられずにいるし、
鉄道車両は皆が使うものだから壊れては困る。
と、思っていたら、車掌が厳重注意して生徒の名前と電話番号を
控えていた。こういったことが重なれば定期券を没収される。
当然といえば当然だが、見本になるべき車掌だった。

 そんな騒がしい高校生たちは陸中山田で降りていった。
やっと車内が静かになった。
エンジンが唸ったり唸らなかったりすること、
夜の海らしき風景が近づいたり離れたりすることを考えると、
入江ごとに駅と集落があり、半島の付け根を越えて
それらの入江を結ぶ役割が鉄道にはあるようだ。

 そのような険しい地形では、道路の道幅は狭くならざるを得ず、
陸の孤島と化す。ならば、道幅が狭くとも
勾配さえ何らかの形で克服できれば安全に走る鉄道は
有効な移動手段といえる。
実際、入江の集落よりも随分高いところに線路は敷かれており、
海のそばを走るようなことはない。

 19時40分、釜石駅到着。
宮古で完全にその姿が変わる14番目の路線・山田線の旅を
終えて、駅裏のホテルに泊まる。
駅前は新日鉄の広大な敷地とは、鉄の街・釜石らしい。
宮古で買ったメカジキの切り落としは脂がのっていてうまかった。



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  秘境・岩泉線

8.古色蒼然たるディーゼルカー

10.仙人峠

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最長片道切符の旅・5日目

9.陸中海岸

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