山田線の快速列車<リアス>宮古行から乗り換える。

 6分接続の茂市駅1番線に停まっていたのは、
1日3往復しかない岩泉行普通列車である。
ワンマンカーかと思いきや、車掌が乗務している。
しかも駅から出てきた運転士はタブレット(通行票)を持っている。
信号がCTC化されて集中管理されているわけではないらしい。

 駅員が信号を確認してから青旗を振る。
そして運転士に敬礼しながら車掌にも敬礼する。
昔ながらの鉄道風景がいまも生き残っているのである。

 少し感動したところで茂市の小さな街を抜け、山間を行く。
これまでの山田線の山の深さとは全然違う。
人家がない谷ではなく、懐かしい昭和の風景が広がる。

 岩手刈屋駅も中里駅も小さな駅。
岩手和井内駅は小奇麗に快走してあった。
高度を上げて渓流に沿うようになると、
コテージから手を振る人の姿があった。
秘境のようだ。

 木製の板張りで1両分のホームしかない押角を出ると
いよいよ道幅も川幅も狭くなり、谷は深くなる。
これが岩泉線の秘境たる所以だろうか。空気がひんやりしてきた。
道路に比べて随分高いところを進んでいる。

 トンネルでつづって川を渡ると岩手大川に着く。
川というよりは沢と言ったほうが正しいかもしれない。
2人が下車する。この秘境に鉄道がある理由は、
そこに人が住んでいて、最寄駅があるからである。
ローカル線の主役は、車両でも風景でもなく、人間なのである。

 道路と同じ高さまで降りた浅内では下車なし。
使われなくなった給水塔のみが残っていた。
わずかではあるが民家が車窓に現れると二升石に着く。
その最後の停車駅を発車すると、車掌が切符の回収に来た。
最長片道切符を茂市で途中下車扱いして、
岩泉線内の切符がほしいことを言うと、経由地に
“盛岡・山田線・釜石”とあるのを確認して切符を発行した。
茂市から740円の切符である。

 16時28分、終点・岩泉到着。
山口県の秋吉台、高知県の竜河洞と並ぶ
三大鍾乳洞・龍泉洞の最寄り駅である。
宮古に出るには岩泉線で茂市を経由するよりも
車で三陸海岸の小本に出たほうが速いという不思議な場所だ。

 折り返し列車には高校生がけっこういた。
彼らを家に送り届けるための列車でもある。
ホームの端を歩いていると、トンボが線路にとまっていた。


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