北上駅では2時間弱の待ち時間がある。
大きい駅なのでネットカフェでもないかと探し歩いてみるが、ない。
岩手南部の中心都市ゆえに、何らかの施設くらいあってもよさそうなのに、
食事処とホテルばかり。中心からずれているのだろうか。

 途方に暮れて駅に戻る。
改札を抜けてから0番線に行くと、列車はすでに停まっていた。
16番目の路線・北上線の横手行普通列車である。
1日5往復しかなくて、10時34分発のこの列車は2番列車。

 新幹線からの乗換え客を10人ぐらい吸い込んで発車する。
それ以外は地元の利用者らしく、2両編成に20人の乗客であった。
ワンマンであるはずなのに車掌が乗っている。と思ったら車掌ではなくて、
ベテラン運転士が横に乗っているというだけなのであった。

 北上市内を抜けていくつかの駅に停車する。
降りる人はいない。この点、昨日盛岡から乗った山田線も変わりない。
本数が少ないローカル線に沿って市街地は延びていないということである。
立川目、横川目と停まりながら山中に入る。
北上山地に続いて奥羽山脈を横断しているのである。

 和賀仙人という名の奇妙な駅に停車したのち、ゆだ錦秋湖に停車。
これまでとは違い、線路に草が生えていないことに気付く。
この区間はダムの底に線路が沈んでいる。
線路切替により、いま走る新線は高いところに建設されてトンネルでつづる。
美しい錦秋湖の水面が下がれば、旧線の築堤が現れることもあるという。
なかなか趣深いところだ。

 ほっとゆだ駅は駅舎に温泉がある。
が、入ってしまうと3時間列車がない。それでは今日のスケジュールが
成り立たなくなってしまう。東北地方のローカル線では、
ちょっと思い立って途中下車できる駅とできない駅とがあるように思う。
都市の周りに区間列車が多数運転されている九州のローカル線とは
その点が異なる。

 緑深き山を抜け、駅間距離が短くなると横手は近い。
どの駅もホームは短く、停留所のようだ。
最後の停車駅・矢比津に停車し、5分で終点・横手に到着した。

 改札で途中下車印をもらおうと駅員に手渡すと驚いた。
経由地を確認するとかしないとかいう話ではなく、
その手にもう1枚同じ切符があったのだ!!!!!!!!!!!
“稚内→肥前山口”と書いてあった。
経由地の別紙があったわけではなく、値段は9万円だった。
学生ではないらしい。
途中下車印はぼくの方が多いように見えたが、彼は外に出ないのだろうか?
どんな人なのかと思ったが、人ごみに消えていった。
この先の閑散線区でまた会えるかもしれないなと思う。

 ここからは最長片道切符を途中下車して、乗り潰しの旅をする。
閑散線区ではないので、遠慮なく青春18切符を使う。
岩泉線などの場合は、正規の乗車券で運賃収入に貢献しなくてはならないが
これから乗る奥羽本線はそんな気兼ねなど要らない。


新庄行の普通列車に乗って、陸羽西線にも乗る。



 奥羽本線と陸羽西線の旅を終えてから、新庄発の普通列車に乗る。
この列車は秋田行だから、横手で降りずにそのまま乗っていく。
17時47分に横手に到着した列車には、雨にぬれた人達が大勢乗ってきた。
雨雲が空を覆い、にわか雨が降ってきたのだ。それもひどい夕立。

 横手以北で大雨の規制がかかっているらしく、対向列車が遅れている。
車内はびしょ濡れの人が多い。隣に座ったおじさんは窓に傘をひっかける。
窓側にぼくが座っていることなどおかまいなしだ。
傍若無人とでもいうべきだろうか。雨滴と傘が足に付くので
「この傘、どけてもらえませんか?」というと、
「いぃ〜よ。つんぎのい゛ぇぎだがらぁ〜。」と、返ってきた。
何て言ってるのかわからない。
「次の駅で降りるからいいじゃないか?」という意味だろうか。
本場のズーズー弁はわからない。理解不能である。
自分の言語力ではやり取りが成立しないことを早々に悟る。

 「あんめやんだがえ?」
「雨は止んだみたいですよ。」
「おぉ〜いがっだなぁ〜!」

 ズーズー弁は聞きたいのだが、いかんせん聞き取ることができない。
鈍行列車で旅することの醍醐味は、方言が移り変わることにある。
その土地その路線の普段着に出会えて、空気を感じることができる。
時速25km規制のノロノロ運転で後三年に到着。
9分遅れらしい。

 右手に大きな入道雲、その手前にちぎれたような雨雲が低い位置にある。
どうやら通り雨であったことは間違いないらしい。
西側にはきれいで真ん丸の夕日が見られた。6分遅れで大曲に到着する。
盛岡からの秋田新幹線・田沢湖線が合流する駅である。
大量に下車があったが、同じくらいの乗車があった。
それも刈和野、神宮寺と停まることでどんどん吐き出される。

 乗降に手間取って7分に遅れが広がった大曲から、
ミニ新幹線である秋田新幹線とともに秋田を目指す。
幹線らしさがあるのだが、元々あった上下線のうち上り線を新幹線用
(1435mm)に線路幅を広げ、下り線は標準軌(1435mm)と
狭軌(1067mm)との三線軌道となっている。
新幹線と在来線が同じ線路を走るため、実質は奥羽本線が
秋田新幹線に吸収されてしまっているようだ。
在来線は単線運転だし。

 羽後境から山中に入り、出羽山地を越えているのがわかる。
陸羽西線のときにも思ったが、なだらかな山々だ。
最後の停車駅・四ツ小屋を出ると、「次は終点・秋田です。」という放送が
流れながら、隣の線路を秋田行の<こまち>が追い抜いていった。

 4分遅れて秋田駅6番線に到着。
宿が遠いことに気付く。駅の中にあるグルメ街で食事をする。
しょっつる鍋やきりたんぽは冬の味覚。
かといって、ハタハタは寿司。
温かいものが久しぶりに食べたくなったので、
ごはんがおかわり自由のトンカツ定食を食べる。



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  奥羽本線・陸羽西線の旅

10.仙人峠

12.いなほは揺れて

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最長片道切符の旅・6日目
11.ズーズー弁に出会う
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