8月20日

 朝5時に起きる。
昨夜はそろそろ温泉にでも入ろうかと思っていたら、
旅館に温泉があったので迷わず入ってさっぱりした。
起きたら手早く仕度。
洗濯物が乾いていない。実は着替えは数枚しかない。
宿の部屋に洗面台があるときだけ、洗濯をしてハンガーに引っ掛ける。
それを繰り返して何とかつないできた。
臭いさえとれればよい。
しかし、早く起きるが故に半乾きというのは盲点であった。
そのまま袋に入れる。どこかで乾かさなくてはならない。

 朝の秋田駅は旅仕度の人がけっこういた。
6時02分と14分に秋田新幹線<こまち>があるからだろう。
みな新幹線改札に消えていく。
反面、いま降りてきた人もいる。
大阪からの寝台特急<日本海1号>の乗客のようだ。


 今日は最長片道切符の旅を続ける前に、男鹿線に乗る。


 最長片道切符の旅に戻って、秋田駅で列車を待つ。
五能線のクルージングトレイン<リゾートしらかみ>や青森行の
ブルートレイン<日本海3号>が発車するなど、にぎやかなものだ。
8時45分、新潟行の特急<いなほ8号>がやってきた。
国鉄特急型の485系電車と呼ばれる車両だが、
まったく別の電車みたいだ。

 <いなほ>とは、米どころを走るのにふさわしい列車名である。
秋田で5分間停車するので駅弁を買い求める人もいる。
秋田新幹線に乗り換えた人は少なかったようだ。
8時50分、定刻に発車する。
昨日の北上線が16番目、そして17番目の奥羽本線で
秋田に着いたから、羽越本線は18番目である。

 秋田を出ると秋田新幹線・奥羽本線と分かれ、
羽後牛島を通過。雄物川を渡る。
車掌が車内改札に来たので切符を見せると、指定券を確認したのち、
「秋田・羽越本線・坂町。確認しました。いやぁーすごい切符ですな。
お疲れ様です。ありがとうございました。」と言った。
はたしてこれから先、最長片道切符がどのような扱いを受けるのか
楽しみでもある。喜んで見せることにしよう。

 しばらくして海が見えた。日本海である。
下浜という駅名からも海が近いことが想像できたが、
きれいな日本海ブルーだ。それも晴れていて何よりなところ。

 秋田駅で買っておいた“ハタハタすめし”を開ける。
ご飯と錦糸玉子の上にハタハタの開きが3枚。あとは煮付けである。
ハタハタははじめて食べたがうまかった。
こんなにご飯が進む魚はそうないかもしれない。
好物の1つとなる。

 ハタハタに夢中になっている間に、羽後本荘に停車した。
何人か乗ってきたようだ。外は水田に変わっている。
先ほどの海岸は松の木が折れているような荒涼とした風景であり、
松の植林が行なわれていた。

 羽後本荘から10分ほどで仁賀保、さらに10分で象潟に停車。
象潟の先の女鹿で4分停車し、普通列車とすれ違う。
すると、車窓には“有耶無耶の関”で知られる場所が広がる。
昨日の日記では、日本史に登場することが少ない東北地方と書いたが
人々の営みはあったので、民話が数多く残る。
 昔、鳥海山に手長足長という鬼が住んでおり、
麓の人々に悪さをしていた。鳥海山には大物忌神が奉られていて、
三本足の霊鳥を遣わせて人々を苦しみから逃れさせようとした。
この霊鳥は、手長足長が鳥海山の山頂にいるときは「有耶有耶」
と鳴き、里に下りているときは「無耶無耶」と鳴いた。
これが“有耶無耶の関”の名の由来である。

 有耶無耶の関を越えると秋田県から山形県に入る。
左手には鳥海山が見え始める。
先程まで雲がかかっていたみたいだがどうやら晴れたみたいだ。
頂の上にある雲が畏敬の念を抱かせるかのような秀峰である。

 庄内平野に入った。
風に稲穂を揺らしているのはササニシキだろうか。
その米どころの中にある遊佐に停車する。
まったく庄内平野というのは果てしなく水田が続く場所だ。
“いなほ”の名はこのためにあるように思う。
新潟平野、庄内平野、秋田平野を通るいい列車だ。

 10時26分、酒田着。
山形県西部の中核にして、庄内平野の中心都市である。
5分停車する。駅弁売りもいる。
ササニシキ弁当を買おうかどうしようか。。。
結局迷ったまま、ドアが閉まってしまう。

 「指定席はすべて売切れです。」
という放送が繰り返される。自由席はもう満杯なのだ。
いま乗っている1号車は半室グリーンなのだが、やはり空席はない。

 酒田を発車すると、庄内平野に水をもたらす最上川を渡る。
穀倉地帯ゆえに、踏切で待っているのは軽トラックばかり。
もう少し時期があとならば、刈入れの時なのだろう。

 10時56分、鶴岡に到着。
左手の稲田の向こうに出羽三山が見え始めた。
月山、湯殿山、羽黒山と、それぞれの山に神が祀られ、
出羽三山神社、五重塔などがある。
史跡は少なくとも民話の数、信仰心の深さは西日本と変わらない。
昨日の陸羽西線、奥羽本線の山越えは、
なだらかな出羽山地の北のほうだと認識する。

 鶴岡から20分ほどであつみ温泉に到着。
ついに指定席にまで立客があふれ出した。6両編成は短いと
思っていたが、これでは特急料金を払って乗ったほうが損ではないか。

 <いなほ8号>は庄内平野に別れを告げて
新潟との県境である鼠ヶ関に入る。有耶無耶の関と並ぶ景勝地。
北前舟で栄えた地方ならではである。

 あふれ出した立客のおかげで席を立つこともままならぬ。
反対側の海の景色が見られたらいいのにと思う。
隣の人は足を組んで寝ており、立つことすらできない。
普通列車のほうがよかっただろうか。
いっそのこと途中下車してしまおうかと考える。
が、時刻表を開いても列車本数が少なくて断念せざるを得ない。
本数の少なさゆえに特急列車に人が集中しているのだ。
晴れの鳥海山、出羽三山を眺めることはできたが、
日本海ブルーを堪能することはできないようで、残念だ。

 11時半過ぎの停車駅・府屋を過ぎると次は村上である。
村上以北は交流電化、以南は直流電化ゆえに、死電区間がある。
デッドセクションと呼ばれるこの部分では、
通過中の数秒間だけ惰行運転と消灯になる。

 直流区間に切り替わって、12時02分村上到着。
まさか特急列車でこのような窮屈な思いをするとは思わなかった。
が、お盆過ぎゆえに帰省からのUターンも残っているということか・・・。
上越新幹線接続特急であることを考えると、
指定席を取れただけでも恩の字だろうか。
降りた人以上の数が乗ってくる。ぼくは降りる。
何という開放感!



  なまはげの里・男鹿線の旅

11.ズーズー弁に出会う

13.米坂線の洗濯物

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最長片道切符の旅・7日目
12.いなほは揺れて
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