小牛田は東北本線開通時からの鉄道の要衝である。
南北に走る東北本線から、西に陸羽東線、東に石巻線が分岐する。
それらの支線を受けもつ小牛田運輸区もある。
が、駅の周囲に街並は少なく、水田ばかりが目立つ。

 20番目の路線・陸羽東線の旅を終えたので
3度目の東北本線・2番線に下りて、一ノ関行普通列車を待つ。
やっぱりか・・・とでも言いたくなるような701系電車であった。
どうもこの車両、好きになれない。
あまりにもローカル線というか、旅人に向いていない気がするのである。
旅人のために電車を作れと言うのは無理な話だが、
乗っててそこに価値を見出すことがなかなか難しくもある。
風景に背を向けて長時間座るのは苦痛だ。
かといって、立って外の風景を眺めるのであればドアしかなく、
そこは自分の占領スペースとも違う。せめて窓でも開いてくれたら、
こんなに閉じ込められた気分にならずとも済むのだが・・・。
そんな思いなど我冠せずといった調子で普通列車は快走するのだった。

 東北本線を北上して、終点・一ノ関に到着。
九州へ向けての旅であるはずなのに北上とは変な気もする。
北海道でも、2駅しか離れていない新旭川から旭川まで進むのに
2日かかった。これらはすべて一筆書きの妙である。
最長片道切符の旅ゆえに体験できることでもある。

 盛岡行の列車に乗り換えるには遠く離れた階段を上って
2番線に行かなくてはならない。相変わらず不便な駅である。
はじめてこの駅に来た時は小学6年生卒業式後の春。
風疹にかかったのを奇跡的に回復し、大親友ヒロシとここに来た。
そのときはまだ、普通電車などはなく、客車列車だった。

 途中下車印をもらう。
「おお〜すごい切符ですねぇ。」と言ってくれた。
“稚内→肥前山口”が何を示しているのかわかる駅員もいるようだ。
駅弁を買ってから、大船渡線のりばの3番線に行く。
駅弁はあとにして、岩手小岩井農場の牛乳を飲む。
新幹線が盛岡へ向けて走り抜けていくのが見えた。

 11時15分、2両編成のディーゼルカーが入線してきた。
快速<スーパードラゴン>盛行である。
1日2本しかない新幹線接続の快速列車とあって、すぐに満員になった。
11時25分の定刻に発車すると、一気に東へ進路をとる。
東北本線・東北新幹線と分かれ、国道と並んで勾配を駆け上がる。
真滝を通過しても勾配は続き、北上山地に分け入っていく。

 北上川を渡って山を下ると陸中門崎を通過。
陸中ということはまだ岩手県なのだ。
これで岩手県ともお別れと思うと名残惜しくもある。
陸中松川を過ぎて猊鼻渓に到着。“げいびけい”と読む。
奇岩絶壁の水墨画のような風景が展開する景勝地である。
20人ほどが下車していった。

 それにしても快速<スーパードラゴン>とはおかしな列車だ。
“ドラゴンレール大船渡線”という愛称にも共通している。
地図で見ると、この大船渡線は大きくΩカーブを描いて東にのびる。
ナベヅルのようなこの形を竜に見立てて“ドラゴンレール”と
呼んでいるのである。これは地元の政治化が自分の土地にも
鉄道を敷設して駅を作りたいと、要するに政治の力が
こんな風に線路を捻じ曲げてしまった典型例である。

 そんな背景を持つ駅の一つである摺沢に着く。
あまり政治が絡んでいるような臭いはしないが、
政治の臭いがする駅などないであろう。そんな駅はごめん被りたい。

 続いて千厩に停まり、
ナベヅル形にならずに、まっすぐ延びる国道と並ぶ。
車掌室の横に陣取っていたので
「ここは義経が乗っていた馬の故郷なんですよ。」
と車掌どのに声をかけられる。そういえば平泉は近い。
源義経が身を寄せていた奥羽州藤原氏の勢力化であった地域を
ひた走っているのだ。千厩という地名も、
昔は馬の産地であったのではないかとは想像に難くない。

 千厩を出るとあとは気仙沼まで20分停車しない。
その間に車掌どのと話をする。
「全国回られているんですか?」
最長片道切符の旅であることを告げて、切符を見せると
「ほぉほぉ。」といって食いつき、経由地を確認し始めた。
「あとはどんなルートになるのですか?」という。
百聞は一見にしかず、であるので時刻表の地図を見せる。
ルートをペンでなぞっておいて正解であった。
こんなに食いつきのいい人ははじめてである。
おそらく公私共に鉄道が好きな人なのだろう。
今日明日の日程を話すと、これから乗る気仙沼線の話をしてくれた。

 そうこうしているうちに気仙沼に着く。
21番目の路線・大船渡線の旅は終りである。
車掌どのは、向かいの2番線に停車中の列車に乗るよう教えてくれた。
JRの関連会社でアルバイトをしている旨を告げると
「呼称と敬礼をお願いします!」と返ってきた。
三脚とカバンを置いて、「3331D、発車!お疲れ様です。」
と言って敬礼すると、<スーパードラゴン>は
エンジン音も高らかに、終点の盛を目指して走り出していった。



15.行商のおばちゃん

17.気仙沼線

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最長片道切符の旅・8日目
16.ドラゴンレール
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