快速<スーパードラゴン>の車掌さんと別れたぼくは、
途中下車印をもらう。外に出てもあまり土産物屋は見当たらなかった。
地図を見ると、気仙沼の市街地の北端に気仙沼駅、南端に南気仙沼駅。
しかも気仙沼駅のは市街地に背を向けるようになっているのだった。
これでは塩釜や石巻と並ぶ東北有数の遠洋漁業の町も楽しめない。
あとは、陸中海岸国定公園内の観光スポットにでも行くしかなさそうだ。

 しかたなく2番線に戻る。
これから乗るのは22番目の路線・気仙沼線の小牛田行普通列車である。
大船渡線の一ノ関行普通列車が発車したあとの13時01分、
気仙沼駅をあとにする。

 ぐるりと左にカーブを切りながら気仙沼の市街地を回る。
やはり水産業、水産加工業が盛んな町のようだ。南気仙沼に停まる。
こちらのほうが海が近いので、市場や港があるのがわかる。
大量に乗車があり、車内はにぎやかになる。

 松岩を出ると、海が見え始めた。
気仙沼湾である。リアス式海岸で有名な三陸海岸の一部。
車内では浮輪とボートに空気を入れ始めた人もいる。
この先の海岸で泳ぐのだろうか。
ローカル線にはマナーなどあってないもののような気もする。
昨日、洗濯物を干していた自分も人のことは言えないのかもしれない。
空いていたらいいのかなと思う。どうなのだろうか?
自分が車掌なら「他のお客様の迷惑にならない範囲で」と言うだろう。
郷に入らずんば郷に従うべし。
割り切ってしまえばおもしろいものだ。

 大谷海岸駅でその人たちは降りていった。
クラゲはいないのだろうか。けっこう人がいるものだ。
ただ海辺を走るのと違って、三陸海岸の場合は磯の上を走る。
だから見晴らしもよく、気仙沼線をはじめとする三陸海岸の鉄道が
入江にある集落を結ぶものであることはよくわかる。
乗っていればわかるが、幹線道路と寄り添うようなことはない。
この地域の住民にとって、
鉄道がいかに重要な役割を果たしているのかを実感できる。

 13時38分、本吉に停車。
気仙沼行普通列車とすれ違うが、海水浴らしき人でいっぱいである。
先程の大谷海岸へ行くのだろう。その本吉を出ると、
これまでとはまったく違う立派な線路となる。
おそらく開通時期が異なるのだろう。
突然高架橋が長く続いたり、トンネルが連続したりである。
この辺りの地形が険しいのだろうが、そういうところほど景色は美しい。
少々歯がゆい思いがする。
各駅間にトンネルがあり、リアス式海岸の入江には下りずに
高いところに駅がある。
入江だと思ったらすぐにトンネルに入り、風景が単調なのよりもひどい。

 14時10分、志津川着。
入江から発達した町のようだ。そこから左手に養殖の筏と牡鹿半島、
さらにその向こうに金華山の島影を望みながら内陸へと入っていく。
駅名の旧国名も“陸前”になった。相変わらずトンネルが多いので、
一ノ関駅で買った駅弁“三陸・海の宝”を開ける。
左から煮つけとアワビ、イクラと炊き込みご飯、ウニと炊き込みご飯。
この地方の駅弁には基本的に外れはない。
どれもうまいものばかりだ。
“前沢牛めし”と迷ったが、いつも海の幸を選ぶようにしている。

 北上山地の南端を越えたらしく、平地が開けた。
辺りは一面の水田。心地よい風が吹く。
陸前豊里、のの岳、和渕と停まって、石巻線との分岐駅・前谷地に着く。
14時49分着。ここで下車する。

 向かいのホームに同時進入した石巻行普通列車に乗る。
23番目の路線・石巻線である。
前谷地からと言っても気仙沼線も同じ土地を走っているから
風景に変化があるわけではないが、気仙沼線が山を越えて
太平洋に出るのに対し、石巻線は平地をたどって石巻湾に出る。
その間に割って入るのが牡鹿半島なのである。

 佳景山などの3つの駅に停車して、20分で石巻に到着。
改札を出て駅前のスーパーに行く。手っ取り早く、
それも乗換え30分程度で土地のものを探すにはこれがいい。
さすがに気仙沼と並ぶ東北屈指の港町とあって、種類は豊富。
何にしようか迷う。ぜひカツオの刺身を!
と思っていたら醤油がない。タタキは売り切れ。
焼サメにする。
なんだろう?これは?と思いたくなるようなもの。
歯ごたえや食感はアジの開きによく似ている。
肋骨もバリバリ食べられる。まずくはないが、とりたててうまくもない。
独特の臭みがある。
これに合う飲み物は、レモンティーであった。
妙に合う。変な話だ。
そんなことをボックスシートで考えつつ、
最長片道切符のルートを外れて、石巻線の終点・女川までたどった。



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最長片道切符の旅・8日目
17.気仙沼線
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