仙台から30分で相馬に着く。
その次の原ノ町では、お座敷電車とすれ違う。
宴会が盛大に行なわれているようだった。
さらにその先の磐城太田では、<仙台行のスーパーひたち>と
すれ違うために運転停車する。

 もう磐城まで来たかと思う。
陸奥、陸中、羽後、羽前、陸前、そして磐城。
まだこの先、いろいろな国を通る。
東北と北海道の大きな違いは地名によく表れているなとも思う。
旧国名を冠した駅名、日本らしい地名が多い東北と
アイヌ言語に由来する北海道。
両者の土地の質は、雪の降り方を含めた気候はもちろん、
旅をする身にとってもまったく違うものである。

 窓側にいた人がカーテンを閉めてしまった。
ぼくは通路側なので車窓を閉ざされてしまった。
反対側の乗客の方を見ても仕方がない。
デッキに立って車窓を何とか確保しようと思ったが、
自由席がいっぱいで指定席のデッキにも立客があふれていた。
太平洋が見えていてもカーテンが開く様子はない。残念だ。
眠ることにする。
自由席にすればよかったのかな・・・。
先日の日本海側の<いなほ>といい、混雑もひどくて
どうも東日本で特急に乗るといいことがない。
普通列車が少ない区間を走る特急は窮屈そうだ。

 目を開けると12時を過ぎていた。
まもなくいわきに到着とのアナウンスがある。
いわき駅構内に入ると停車と徐行を繰り返して連結。
ガチャリと振動がくると前に7両がつながったようで、ドアが開く。
ここで下車する。

 解放されたところで駅弁を買う。
が、目当ての印籠弁当がない。仕方がないので
駅前のコンビニに行っておにぎりとお茶を買う。
磐越東線用の6番ホームへ下りると、
すでにベンチに人がいっぱいだった
2両編成のディーゼルカーが入ってくると、
階段を下りてくるグループが数組。
どうやら鉄道研究会らしく、ドアが開くと同時にドカッと乗る。

 混雑から開放されたと思ったら、
今度は鉄道ファンばかりのとんでもない列車に乗るはめになった。
2〜4人のグループ中すべての人が手に青春18切符を持っている。
思わず、きょとんとしてしまう。
こういうのをぼくの言葉で“鉄分が濃い”という。
本当に鉄分が濃い。
最長片道切符を持っていると知られたら囲まれてしまうこと必至。
幸いにしてワンマンだから車内改札はない。
終点の郡山までおとなしくしておこう。

 13時12分、郡山行普通列車は、
地元の高校生よりも鉄道ファンのほうが多い異常事態で発車した。
鉄分濃厚な会話が聞こえてくる中、
市街地を抜けて赤井、小田郷と停まり、高校生は皆下車する。
こうなると相対的にもますます鉄分が濃くなる。
地元の人たちが迷惑していないことを切に願う。
この車内から鉄分を抜いたら、
昨日の陸羽東線ぐらい空いているはずである。

 そんな日常では見られない稀有な乗客たちは
昼飯時とばかりに駅弁を皆で食いあさっている。
聞こえてくる会話によると、どうやら首都圏の鉄道ファンらしい。
確かに朝出れば、いわきに昼過ぎには着く距離。
日帰りにはちょうどいいのだろう。
ぼくが首都圏に住んでいたら、そんなルートを考えたかもしれない。

 磐越東線は“ゆうゆうあぶくまライン”の愛称が付いており、
なだらかな阿武隈高地を越えていわきから郡山に至る路線である。
エンジンの唸りも高鳴ることはなく、足取りも軽やかに走る。
狭い谷を抜けて渓流を渡ると川前に停車。
はじめての行違い駅で、いわき近郊の人たちが使うほどに
列車本数が多くない路線とわかる。

 山を下って13時55分、小野新町に停車。
対向のいわき行とすれ違う。区間列車も運転される中核駅である。
ここから神俣へ抜けると谷が開けてくる。
途中駅の海抜を見ると400mを越えている。
急勾配らしきものはなくてもけっこう高い位置にいるらしい。

 隣のボックスにいる鉄道ファンらしき中学生のグループは
北海道の話をしている。美味いものは何かとか。。。
近頃は北海道に行くお金を親が出してくれるらしい。
ぼくがいろいろ行かせてもらえたのはいつ頃だっただろうか。
中学生のときは勉強ばかりだったからなぁと思う。
鹿児島から福岡に帰るときに思いっきり遠回りをしたりと
思い出を作ったものだ。

 三春で立客が出るほどの乗車があった。
その半分は鉄道ファンが車内を占拠していたせいである。
市街地に入って、東北新幹線、東北本線が近寄ってくると
14時48分、郡山着。
26番目の路線・磐越東線の旅が終わった。



19.思い出を作る旅

21.磐梯山の麓

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最長片道切符の旅・9日目
20.鉄道ファンに埋もれて
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