直江津駅からは32番目の路線・北陸本線に入る。
1番線に下りていくと9時44分発の高岡行普通列車が
停車中であった。ここからはJR西日本エリアとなる。
いよいよかと思う。感慨深い。が、列車が遠い。
行き止まり式のホームだから仕方ないが、高齢者にはきついだろう。
乗り込むなり車掌が笛を鳴らした。

 要衝らしい直江津駅構内の分岐器をいくつも渡り、
複線電化の本線を走り出す。海に沿う国道も寄り添ってくる。
海辺の駅・谷浜、有間川と停車。
無人駅だが寂寥とした感じが何とも言えない。
昨日までの雨の影響で沿岸部は海の色も濁っているが、
遠くのほうはまさに日本海ブルーである。
特急<いなほ>に揺られた7日目の羽越本線以来の日本海だ。

 ただ地形は険しく、トンネルのくりかえしである。
道路は着実に海沿いであるのに恨めしく感じられる。
したがって駅も変なところにある。
名立駅はトンネルに挟まれ、筒石駅はトンネルの中。
トンネルを抜けたところで能生に停車する。
長いトンネルだった。

 いま乗っている車両も元々特急型である。
それも寝台車であったから、普通列車としては非常に乗りにくい。
寝台車の面影を残す車内は随所に“からくり”があるが、
すべて固定されてしまっているのが残念。
がんばれば上段と中段の寝台が飛び出してきそうだけど。
先頭車両は一方が特急型と同じ顔、もう一方が“食パン顔”だった。

 再び海が見えはじめ、浦本、梶屋敷と停まって市街地が現れる。
10時22分、糸魚川に到着。ここで下車する。
何度か来たことがあるが、相変わらずいい駅だ。
国鉄の匂いがプンプンする。
いい意味で“古さ”を残した駅である。
普通列車は特急<はくたか4号>を退避するらしく10分停車する。

 その普通列車の先、ホーム端に
オレンジ色のディーゼルカーがぽつんと停まっていた。
33番目の路線・大糸線の普通列車・南小谷行である。
わずか1両のディーゼルカーの横を<はくたか4号>が発車していく。
まさにこの先の隘路を物語る構図である。

 “大糸線の列車にはトイレの設備はございません”
の表札があった。むむむ。
途中下車印をもらうついでにトイレにも行っておかねばならない。
駅員は女性であった。特に丁寧に確認する素振りもなかったが
「どこに押しましょうか?」と言う。
どこでもいいから「お好きなところへ」という他ない。
なんと日付入りで押された。
もう8月24日なのだと気付く。
10日以上旅をしている。
最長片道切符だから当然だが、こんな長い旅ははじめてだ。

 車両そのものは東北の山田線や岩泉線、米坂線、磐越西線で
乗ったものと同じだが、今回はちょっと違う。
残念なことに冷房完備なのである。
重い半自動ドアを手で開けると油臭いにおいがしてくる。
懐かしい国鉄のにおいだった。
子供の頃に帰ったようにうきうきしてしまう。
窓枠のテーブルは木製だし。

 富山方面からの普通列車と特急<はくたか>の乗換え客を
吸い込むと、車内は満席になった。
10時53分、ブルルンという音とともにディーゼルカーは動き出す。

 車内はどうもハイカーが多いらしい。
もちろん青春18切符の旅行者と思しきグループもいる。
こんな特別切符が利用できる期間内は、ローカル線も
混むのだなと思う。ローカル線に乗るのに青春18切符・・・。
それではその路線の儲けにはならない。
正規の乗車券で旅するべき。と、説いても無駄である。
人は薄情なものだなと思う。
ぼく自身もそうやって旅をすることが多いから人のことは言えない。
ただ、青春18切符を使うことは、最も弱い立場に立つこと、
すなわち、普通列車しか乗れない切符を使うことによって
旅の自由度を下げていることに他ならない。
そのことに気付かずに、または棚に上げて
接続が悪いだの本数が少ないだの言っても仕方がない。
格安で旅をさせてもらったいる身分であること、
その身の程をわきまえるべきなのだ。
もっとも、そうやって自由度を減らすことで自動的にプランが決まる
ということもある。普通列車には普通列車のよさもあるし。
最長片道切符は、そんな青春18切符とは対極にある。
ルートだけ決められ、有効期間は18切符の10倍以上で59日。
値段は7万2千円。そう考えると最もお得な切符だと思う。

 直江津から糸魚川まで海に沿っていたのに、
大糸線に入って川沿いとなった。最長片道切符はいけずである。
先程まで海沿いを少し走ったかと思えば、山を目指せという。
そしてこの大糸線の走る谷は、日本の東西を分ける
中央構造線“フォッサマグナ”に沿っている。
日本海沿いに親不知から富山を目指す北陸本線と分かれて
姫川に停車。さらに頸城大野に停車するうち
この路線の母なる川・姫川が寄り添ってくる。

 同じように交通路の母となっている川はこれまでいくつもあった。
最上川と陸羽西線、阿賀野川と磐越西線、信濃川と飯山線。
これらの組み合わせはだいぶ表情が異なっていたが、
今度もまただいぶ違った表情をしている。
これまでで最も谷が狭いのである。
飯山線と違って、ロックシェッドも連続する。
暴れ川の姫川からしっかりと守られている感じだ。
昨日の雨のせいで川の水もさほどきれいではない。

 小滝、平岩と停車し、県境を越える。
これまで新潟県であったが、再び長野県に入ったのだ。
大糸線・糸魚川〜南小谷間といえば、
姫川が氾濫して随分と長い間不通だった区間でもある。
一時期はそのまま廃止になるとささやかれたぐらいだった。
それがいまや、鉄橋が流されたところは
新しくて頑丈なものが架かっていて、列車も走る。
すべてJR西日本のおかげである。
旅をさせてもらっている以上、やはりJRには感謝しなくてはならない。
が、ここまで鉄道にこだわって旅をしているからには
表彰されてもいいくらいだと、傲慢な自分が少しだけ顔を出す。

 姫川を何度も渡りながら北小谷、中土に停まり、
11時50分、終点の南小谷に到着。
隣の1番線には新宿行の特急<あずさ>が停車中だった。
7両編成とは長い。
わずか1両では肩身が狭い。

 途中下車印をもらって3番線に下りると、
折り返し松本行となる普通列車が入線してきた。
南小谷はJR東日本と西日本の境界駅でもある。
4時間だけJR西日本のお世話になって、東日本エリアに戻る。
2番線の糸魚川行ディーゼルカーが発車するのを見届けてから
こちらも発車する。



27.妙高高原

28.姨捨駅

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最長片道切符の旅・11日目
28.フォッサマグナ
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