東京駅の京葉線ホームに降り立つ。
ついに東京に来たかという高揚感があってもいいはずだが、如何せん
地下ホームでは実感が湧かず、盛り上がらない。
さらにげんなりしてしまう事態に気付く。京葉線地下ホームは
地下5階、次に乗るべき中央線ホームは地上5階なのである。
歩く。ひたすら歩く。そしてエスカレーターを上る。

 まず八重洲南口の改札で途中下車印をもらう。
最長片道切符とわかってくれたのか、一番上に押してくれた。
“東京”という文字があんまりはっきりしないけど。
そして中央線1・2番ホームへ上がる。乗換えというか、
ホーム間の移動に20分もかかった。しんどいではないか。
最も遠いホームから最も高いホームへと乗換えを強いるとは
最長片道切符も人が悪い。

 13時17分発の高尾行快速電車に乗る。
折り返し時間が2分とは慌しく感じるが、乗客は慣れたもの。
座って発車を待つだけである。ぼくとは雰囲気が違う。
それだけは明らかに思える。

 東京駅を発車した電車は、レンガ造りの由緒ある駅舎を背に、
ビルの谷間を駆け抜ける。これまでの京葉線とはだいぶ違う。
高架橋を走っていてもさらに高くそびえるビルディングが林立するのは
東京ならではだ。神田、御茶ノ水に停まる。
江戸城の堀の北側を走る。ということは南側に見えているのは
皇居である。

 飯田橋、市ヶ谷を過ぎて四谷に停車。
次は新宿である。その新宿で途中下車して、下車印をもらう。
東京駅の途中下車印がわかりにくかったからである。
さすがに乗降客数日本一の駅だと思う。人の数が桁違いだ。
何十万人という人がここを訪れているのである。
この駅の改札に立つと、切符に鋏を入れるチケッターは5日で
使い物にならなくなったという。

 東京駅の下車印の横に押してもらい、中央線快速電車の
7・8番ホームに上がる。13時36分発の特別快速は西国分寺には
停まらないので、13時40分発の快速電車・高尾行に乗る。
停車駅は中野、荻窪、西荻窪、吉祥寺、三鷹の順である。
この順に停車して人は減っていくのであるが、
写真など撮る余裕がない。景色にも変化がない。

 7人掛けのロングシートに7人座って、
それぞれがまったく違うことをしている。横にいる人が何をしていても
我関せずといった様子である。気を遣う様子もない。
そうしている方が楽だからだろうか。
そう考えると急に車内が冷たく感じられるようになった。
移動時間がもったいなく感じるようになる。
そして早く目的地に着きたいと思い始める。
こうして日本人はスピードを求め、それが便利であることのように
感じられるようになったのではないかと思う。
以上が、現代の日本人にとって“最も無駄な切符”で旅をする
自分の意見なのであった。

 14時06分、国分寺に停車。
鉄道総研の研究所はこの辺りなのかなと思いつつ、
さらに3分で西国分寺に着く。46番目の路線・中央本線から
2度目の武蔵野線に乗り換えるため、下車する。
隣に座っていた女の人がぼくの日記を横目で見ていた。
びっしりと書き詰められた日記を見て何を思っただろうか。
今頃バカにしているのかもしれないのだけど。

 西国分寺駅4番線に上がる。
貨物列車が走っていった。どうもこの路線は旅客列車よりも
貨物列車のほうが威張っているような印象がある。
南浦和・三郷方面とは一度聞いた地名だ。
14時16分発の各駅停車・南船橋行に乗る。
先程通った船橋まで行かぬよう用心しなくてはならない。

 地下に入り、日の差すところで新小平に停車。
車窓は地下では望めない。さらに地下トンネルを抜けて新秋津着。
地下とは言うが、実際はこちらが地上、武蔵野台地の中を
走っているため、周りが高いのではないかと思う。
東所沢から高架線に上がり、新座、北朝霞、西浦和と停車する。
孫らしき子供を連れたおばあさんが乗ってきたので席を譲る。
なんだか毎日席を譲っているような気がしないでもない。
3分で武蔵浦和駅に着き、下車する。

 途中下車印をもらった後、2度目の武蔵野線に続いて
2度目の埼京線に乗る。14時48分発の各駅停車・大宮行である。
この付近は東北・上越新幹線と並んでいて、
市街地の速度制限のために新幹線もゆっくりと走る区間である。
東京行の<はやて・こまち>が走っていった。
武蔵浦和を出ると、中浦和、南与野、与野本町、北与野と停まり、
終点・大宮に到着。車窓にほとんど変化はなかった。

 大宮からは47番目の路線・高崎線で郊外へと抜ける。
やっと時刻表で列車の時間を調べられるところへ出てきた。
が、実際問題時刻表で調べる余裕はないに等しく、階段を上がれば
15時06分発の高崎行普通列車があった。
残り時間は3分。途中下車印をもらって8番線に下りる。

 入線してきた15両編成のうち、前5両は途中の籠原行だったので
後ろ10両に乗る。乗り継ぎ乗り換え、時間との勝負を強いられて
首都圏の流儀に従ってきたが、とりあえず小休止である。
しかし、一息つきたくても座れない。日曜日であることを忘れていた。
やむを得ない。買い物帰りの人たちが多いようだ。



38.臨海工業地帯

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