天王寺駅の大阪環状線ホームへ下りる。

 一瞬戸惑う。
大阪環状線で京橋まで行かねばならない。最長片道切符のルートでは外回りの
西九条経由である。ところが案内を見ると内回りとも外回りとも書かれずに
“大阪城公園前・京橋・大阪方面”、“新今宮・西九条・大阪方面”とだけある。
大阪を通らねばならない!と思っていたから混乱してしまった。
さらに混乱する事態が続く。

 12・13番線の間には線路は一本しかなく、この線路に到着した列車は
どちらのホームにも降りられるようになっている。これは逆に言うと
乗るほうにとってみれば不便そのもので、両側の扉が開いていたら
内回りなのか外回りなのかわからない。行先表示にも“大阪環状線”としか
書かれていない。仕方ないから列車を通り抜けて内回り側のホームにいた
運転士に訊くと「内回りですよ」との答えが返ってきたので、外回り用ホームに
戻ろうとするとドアが閉まった。発車5分前になったので完全に“内回り電車”
になったのである。そして無情にもその扉の向こうに“外回り電車”がやってきた。

 「乗るの?乗らないの?」
と、乗るべき電車は訊くこともなくあっけなく発車していった。おまけにもう一度
階段を上って外回りホームへ行かねばならない。えぇい!ややこしい!
東京の新松戸で武蔵野線の上下線ホームを間違えたときのような、
“自分だけが取り残されている”というあの風が吹いた。

 再び13・14番ホームに立ち、“外回り電車”を待つ。
もう間違えることはあるまい。74番目の路線・大阪環状線の電車がやっと
入線してきて、13時54分に忌々しい天王寺駅を発車した。
東京で迷ったときよりも混乱した気がする。自分が特殊な乗客である以上、
文句は言えないが、窓を開けて風を感じ、少し落ち着こう。
罪を憎んで人を憎まず。
というと、自分が罪を犯しているようだが、別に違反しているわけではない。
ちゃんと時刻表の上でできる限りのことをしているに過ぎない。

 最長で遠回りをするために、天王寺〜京橋間を内回りで11分のところ、
外回り(西九条経由)で30分かけねばならない。別に外回りを贔屓している
わけではない。それがいまの旅のルールだからである。いくらでも近道をしようと
思えばできた。あえてしようとしないのは、切符と向き合いたいからでもある。

 関西本線が下をくぐって環状線の間に入ってくると新今宮に着く。
この時点で環状線(外回り)、関西本線(上下線)、環状線(内回り)の順に並ぶ。
その間に渡り線があり、関空特急や紀州路快速はここを通って大阪環状線に入る
のだなとわかる。阪和線から関西本線ホームに移り、一時的に関西本線の線路を
走ってから大阪環状線に移るらしい。これで天王寺駅で関西本線ホームに
関空特急や阪和線の快速ばかりが発着するのかがわかった。

 さらに環状線内回りも関西本線を跨いで、環状線(内回り・外回り)、関西本線
(上下線)の順になった。そのまま今宮駅に着く。天王寺駅のときとは位置関係が
逆になっている。天王寺〜今宮間は関西本線でも大阪環状線でもある重複区間。
今宮を出ると、関西本線は難波の地下へと消えていった。半年前に関西本線で
JR難波まで乗ったが、名阪輸送を近鉄と競っていた頃の面影はなかった。

 大阪環状線単独の複線区間に入ると、ビルの谷間を走る。
東京ほど近接してはいないが、見上げなければならないほど高いビルもある。
高層ではないが、電車に乗っていても窮屈には感じない。乗客も皆ほのぼのとした
笑顔を見せている。東京のような冷たさはまったくない。これが関東と関西の違い
であろう。線路の上から電車の内外を見ると、大阪よりも東京のほうがよっぽど
ごみごみして見え、自分が流されてしまいそうになる。なぜだろうか。

 芦原橋、大正、弁天町と停車し、左から桜島線が近づいてくると西九条に着く。
桜島線は大阪港湾部へ伸びる路線で、貨物列車をはじめ数多くの電車が走る。
ユニバーサルスタジオなる駅もある。そして西九条駅からは貨物線が分岐して
新大阪駅へとつながっている。大阪駅北にある梅田貨物駅の横を抜けるルートで
特急<くろしお>や関空特急<はるか>が頻繁に走る。
東海道本線と大阪環状線の間を結ぶ小さな貨物線。単線で下町を駆けるのを
関空特急の車内で感じたことがある。

 西九条を出ると福島駅に停車し、左から東海道本線が近づいてきて
大阪駅に到着。中心街・梅田である。人の流れの向きがわかりやすい。
東京のように縦横無尽に錯綜するのではなくて、流れがはっきりしているのである。
一旦下車してその流れに乗り、途中下車印をもらう。

 大阪環状線ホームに戻り、外回りの天王寺行電車に乗る。
天満、桜ノ宮と停車し、11分で京橋に着いた。ここで乗換えとなる。
短いようで長かった大阪環状線は終わりである。



58.古代史の世界

60.消えた終着駅

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最長片道切符の旅・20日目
59.大阪環状線
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