京橋からは75番目の路線・片町線に乗り換える。

 片町線と大阪環状線は西国分寺駅や新松戸駅のように立体交差している。
こういう駅は構造がわかりにくかったりする。北口、西口、南口とあるが、西口は
駅員不在だったので北口を探すと階段を上り下りさせられる。何だかわかりにくいが
人の流れはきっちりと分けることができそうだ。

 途中下車印をもらう。
ホームに下りようとすると“JR東西線・北新地・尼崎方面”と“JR片町線・四条畷・
松井山手・木津方面”と書いてある。わかりやすい愛称名を“学研都市線”として
名付けてあるのではなかっただろうか。ますますわかりにくくもある気がする。
線路もつながり、列車も直通なのに、京橋を境に路線名が変わって案内板も
変わるのはなぜだろうか?こんな路線も珍しい。

 これは、片町線が関西本線の木津から京橋の西にある片町を結ぶ路線だったことに
由来している。当初はローカルムードも漂う路線で終着駅は片町だった。
大都市大阪の中心部に近いところにあるので起点かと思うと、終点だったのである。
すべて東京を中心に決めたのでこうなってしまったのだが、大阪のファンはおもしろく
ないかもしれない。奇妙なのは紀勢本線も同じで、天王寺から白浜・新宮方面へ
向かうのが“上り”となっていて戸惑いを覚える。

 京橋の隣が終着駅・片町だった。
駅間距離0.5kmで、モルタルの駅舎があったという。
大阪の都心にあってひなびたたたずまいの駅はまさに空白地帯であった。
過去のものとなったのは北新地の地下を貫いて尼崎までを結ぶJR東西線の開業と
同時に線路も片町駅も消えてしまったからである。片町線沿線には大学が
移転した上にベッドタウンとして発展し、環境が一変したのである。
経営する側にとっても利用する側にとっても、東西線開業は片町から尼崎までを
延伸するのと同じで、廃止されても特に反対運動は起きなかった。
むしろ片町駅を迂回する道路の交通事情が改善されて渋滞がなくなったという。
片町の名は路線名にのみ残る。

 片町からではなく尼崎からの電車が入線してきた。
14時52分発の木津行快速電車である。はじめて乗る路線だが、あまりワクワクしない。
全車ロングシートだからだろうか?よくわからない。慌しさがあるからだろう。

 発車すると民家の脇を抜けていく。
都心に近いはずなのに古い家が密集している。これが大阪の下町なのだろうか。
鴨野を通過して放出(はなでん)に着く。工場を避けながら線路が敷かれているので
カーブが多い。徳庵では近畿車輛の工場線が合流する。新型車両がビニルシートを
かぶせられて並んでいた。

 通過する駅は高架化されていてどんな駅なのかわからない。
高架路線は高いところを走るから駅周辺はもちろん、遠くまで見渡せる。しかし、
どんな駅なのかは高架駅だとホームの上しかわからない。高架駅はどれも同じように
見えてしまう。踏切もないので通過待ちをする人の表情も見えない。
機能本位はおもしろくない気がする。

 鴻池新田を通過して住道に停車。野崎を通過して四条畷。
忍ヶ丘と東寝屋川を通過して星田に停車する。若い人たちも結構いる。
大阪環状線と何ら変わらぬ昔の国電風景のように思える。
しかし決定的に違うのは、中心部から遠ざかる方向に向かっているので
少しずつ乗客が減ってくることである。人が乗ってこない。

 右側にあった丘が少しずつ高くなり、生駒山地になる。
この山地を迂回しているために、片町線は地形を克服することがない。
平坦線だから全体的に変化に乏しくもある。ただ、車窓はどんどん変化して、
都心→下町→住宅街と変わった。この先はおそらく田園風景になるのではあるまいか。

 車内が閑散としてくるといつのまにか高架橋を下りていて、長尾に停車。
片町線が学研都市線として生まれ変わる前はここから東は非電化でディーゼルカーが
走っていた。本当なら気分を変えてみたいところだが、いまは電化されていて
直通する。新興住宅地も尽きようとしているように見える。

 長尾を発車すると松井山手から京都府に入る。
生駒山地の北端を走り、急カーブが連続するローカル線の趣である。
こんなところに通勤型電車は明らかな場違いであろう。大住で4分停車し、
対向列車とすれ違う。北側には宇治や城陽の街が見えている。

 京橋から30分あまりで京田辺に着く。
ここで後ろ3両を切り離す。通り抜けはできないからいったんホームに降りて
前4両に移る。4両目と5両目の間で車掌はレバーを切り換え、切り離し作業を
行なっている。

 2分ほどの停車時間で車掌も交替し、発車する。
大阪府を抜ける長尾からは各駅停車になっていて、同志社前、JR三山木と停まる。
近鉄京都線が並び始めた。奈良へ向けて東進しなければならない片町線であるが
生駒山地を迂回したために今度は南へ向かっているのである。近鉄と高速道路の
向こうにはJR奈良線もあるはずだ。

 近鉄エリアゆえに圧倒されてる印象は拭えないまま、
下狛、祝園、西木津と停車して終点・木津に着く。ここで乗換えとなる。
同時進入で奈良線・京都行きの普通電車が入線し、半分が乗り換えていった。
他にもみやこ路快速や奈良行普通電車がやってくる。乗換えの労を厭わなければ
かなりスムーズに奈良へも京都へも行けるのである。

 木津駅は3つの路線が集まる駅にしては小ぢんまりとしていて簡素であった。



59.大阪環状線

61.望郷の停車場

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最長片道切符の旅・20日目
60.消えた終着駅
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