木津駅で途中下車印をもらい、ホームに戻る。

 ここまで乗ってきた片町線の快速電車は折り返し作業を終えて宝塚行の
快速電車に変身している。ちょうどよく、15時57分発の加茂行があった。
本日2度目の大和路快速で1駅。あっけなく加茂に着く。

 この旅で3度目の関西本線。
3つある関西本線の表情のうち、最後がこれから乗る亀山〜加茂間に相当する。
山を越えて右手に住宅地が見える加茂駅。中線に入ったので両側の扉が開いた。
左側に降りると列車のドアが閉まっている。どうやら反対側だったらしい。
車内放送で乗換え案内はされていなかったように思うのだが・・・。

 5分で亀山行に接続する。肩を落としてホームを移ると
大和路快速の6両編成と比べてはかわいそうな姿で停車中の亀山行は
1両のワンマンディーゼルカー。3つめの表情を象徴するかのごとく、
本線とは思えぬローカル線である。

 16時08分、加茂駅をあとにする。
しばらくは民家もあったが、やがて木津川が寄り添ってくる。
木津川の谷の崖っぷちに線路は敷かれており、ワンマンカーは健気に走る。
川は交通路の母という言葉は関西本線にもふさわしい。線路も道路も母なる川に
手を引かれて谷へと分け入ってゆき、そして分水嶺となるサミットを迎えて
トンネルに入るときに、別れを告げるがごとく汽笛を鳴らす。

 木津川はそんなに蛇行しているわけではないので
鉄橋でわたるのは1ヶ所だけである。そこから眺められる木津川の谷は美しい。
が、一瞬で終わってしまう。大和路快速で乗った法隆寺以西にもそういう区間は
あった。橋とトンネルは地形を克服するための人口通路の極みである。
トンネルは気候に左右されない分、進入してしまえばつまらない。
反対に橋は風に弱いが美しい景観を生み出して風景に融けこむ。渡るときには
思わず外を見てしまいたくなる。しかし、それこそものの数分で渡ってしまい、
もっとゆっくり渡って欲しいとさえ思う。まったく対照的である。

 8分で笠置に着く。
春は桜並木が見事な駅である。4月に訪れたときはそれは見事なものだった。
ぜひ春に来たいと思う。笠置から大河原、月ヶ瀬口と停まる。
月ヶ瀬口も笠置同様、ホームに桜の花が咲く駅である。

 木津川はいつのまにか車窓から消えて島ヶ原に着く。
どの駅も長いホームと列車の行き違い設備を持つ駅である。実は名古屋〜大阪の
名阪輸送においては東海道本線よりも関西本線のほうが距離が40km短い。
かつては関西本線の前身である関西鉄道と東海道本線が競っていたが、
関西鉄道は敗れて国鉄に買収される。単線非電化であること、
さらには東海道新幹線の開通や近鉄線の輸送力向上により、競争力を失っていく。
幹線としての機能を果たせなくなった関西本線は“望郷の停車場”という愁いが
強く残っているのである。

 伊賀忍者の里である伊賀上野で乗客が入れ替わり、上野盆地を進んで
佐那具、新堂と停まる。さらに、山に入るか入らないかというところで左から
草津線が現れて16時58分、柘植駅に到着。今日の最長片道切符の旅は
ここで終了である。今日はなかなか長かったかもしれない。

 途中下車印をもらうと、もう一度同じ列車に乗り込んで
亀山から名古屋へと帰宅した。



60.消えた終着駅

62.近江富士

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最長片道切符の旅・20日目
61.望郷の停車場
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