敦賀は北陸本線の中でも要衝である。

 北陸西側地区の電気機関車が集中配置されているし、構内の配線が
複雑なのからもわかる。北陸地方は首都圏からだと遠回りをしなければ
ならない遠い土地。上越新幹線経由でも東海道新幹線経由でも距離的には
そんなに差はない。したがって加賀温泉駅のホームなどには上りホームだと
“福井・大阪・京都・名古屋・東京方面”、下りホームだと“金沢・富山・新潟・
青森・上野方面”と書かれているのが興味深い。昔を偲ばせているのである。

 敦賀駅の広い構内の西端に1・2番ホームがある。
6分接続の東舞鶴行普通列車はすでに入線していた。
68番目の路線・小浜線である。

 途中下車印はもらわずに行く。
少し落ち着きたいと思う。2両編成の電車は、乗客の半分が高校生という
状態で7時44分に発車した。なんとか乗れたという安堵感が漂う。
このあとの列車で東舞鶴まで行くには10時45分まで待つ必要がある。
今日のネックはこの小浜線なのである。

 特急街道を離れてローカル線に乗り換える。
こんなときは背筋がぞくぞくしてしまう。時刻表を愛読しては一人旅に出て
にんまりしてしまうのは自閉症らしい。そうなのかと思う。
周りが心配する様子もないのでそんなことは気にしなくてよい気がする。

 左手に敦賀運転派出所を見ながら北陸本線と分かれる。
国道を踏切で渡り、山裾を上っていく。その山の上には北陸本線・上り線の
ループ線がある。遠回りをすることで距離を稼ぎ、勾配を緩和しているのだが、
北陸本線のような旅客の大動脈でループ線があるのは珍しい。

 山を上った列車は敦賀半島の付け根を走り、
敦賀市街を見渡せる場所に出る。反対側の山肌が杉津峠にあたる。
西敦賀、粟野、東美浜と停車しながら若狭湾を目指す。

 海岸線の険しい地形に沿って線路が敷かれているわけではなく、
少し高い土手の上や、山襞に沿って敷設してある。海岸から遠い場所が
ほとんどだが、海に出ればリアス式海岸が見渡せて素晴らしい眺めとなる。
トンネルと入江が連続する三陸海岸とは、少しリアス式海岸の入り組み方が
違うようだ。

 美浜、気山と過ぎ、無人駅の三方に停まる。
三方といえばこの地方では三方五湖がある。汽水湖としても知られ、
日本各地にあるリアス式海岸の中で唯一、湖と呼べるものがあるほどに
この付近の海岸線は複雑なのである。三方の次は無人駅の藤井に停まる。

 線路際の細い流れで白菜を洗うおばあさんがいる。
わずかな田があり畑がある。もう収穫後のものもあり、今年のことはすべて
終わったというように稲の切り株が並んでいる。

 小浜線は3度目である。
若狭湾に沿う路線であるが、沈降海岸独特の複雑な海岸を持った蟹の
ハサミのような半島がいくつも突き出している。したがって、線路はその
付け根を上ったり下りたりする。海を眺められるところはわずかしかないので
物足りなくもあるが、低い峠を越えるときに日本海を遠望することはできる。

 はじめて乗ったときには非電化で、ディーゼルカーに乗った覚えがある。
2度目の時には電化されていたが、ひどい混雑ぶりだった。地元の新聞には
高齢者が多い地区なのに、電車が走るようになって座席が減ったと
散々叩かれたらしい。今回はゆっくりと座れているから改善されたのだろう。

 十村、大鳥羽、若狭有田、上中、新平野と停車し、
左手に国道が寄り添ってきたら東小浜、小浜の順に停まる。
その小浜は漁業の観光の町であるが、古寺も多い。室町時代の応仁の乱の
際に京都から小浜へ難を逃れた人が多かったからだという話もある。
京都から真北へわずか60kmだから頷ける。寺の所蔵品には国宝や
重要文化財もたくさんあり、「海岸の奈良」と呼ばれるほどである。
9時前の到着だから病院や庁舎に向かう人が多く降りたらしい。

 2分停車の後、ガラガラになった普通列車は発車した。
除雪車も構内に置いてある。日本海側は雪に対しては十分注意しなくては
ならないのだろう。

 小浜を出てしばらくすると海岸を10分ばかり走る。
小浜線ではここだけであるが、対岸には島のように半島が見える。
陸路が峻険なために橋がかけられている。新しい橋に見える。
船でしか渡れなかった陸の孤島の人にとってどれほどありがたい橋かは
わからない。想像の域を超えているだろう。

 勢浜、加斗と停まるうちにリアス式海岸の険しさが消えている事に気付く。
何の変哲もない湾に見えるから不思議ではある。穏やかだ。
若狭本郷、若狭和田、少し大きめの若狭高浜、三松、青郷と海辺の名が続く。
最後の駅・松尾寺を出ると山間部に入る。

 半島の付け根を越えたらしく、前方に舞鶴の市街地が広がって
そこへ向かって駆け下りていく。高架橋に上がると停止信号が連続。
なぜかと思っていたら、同一ホームに頭を突き合わせて停まるので
一旦停止と確認作業が連続するらしい。1面2線のホームに3本の
列車が入り、乗換えをスムーズにしているのだ。

 福知山行の普通列車を見送り、途中下車印をもらう。
かなり下車印も多くなった。この分だと九州に着く頃は押す場所に
困るぐらいになっているのではなかろうか?



70.憧憬の国鉄特急

72.タンゴディスカバリー

最長片道切符の旅TOPへ





最長片道切符の旅・23日目
71.若狭湾
広告 [PR] カード  資格 転職 スキルアップ 無料レンタルサーバー