また京都駅にやってきてしまった。

 琵琶湖の西を通って以来である。あのときは隣の山科駅で途中下車して
昼食を探しに京都駅へ来た。名古屋から紀伊半島回りで関西に入ったり、
関西から名古屋へ向かうと思いきや京都に向かって、さらに京都から
離れる方向に向かったり、岐阜に戻って北陸に出たりと、まったくもって
何がしたいのかわからないであろう。地図を見てたどるだけでは
アホらしさ極まって襟を正したくなる思いである。

 京都駅は広い。
0番ホームは日本一長いホームである。南北自由通路と並行している
ホーム連絡通路も雑踏の中にあるが、開放感があって好きである。
なぜこんな吹き抜け構造にする必要があったのかとさえ思う。
この駅ではいろんな思いをした。そんな自分が過去から変わっていくのとは
対照的に京都駅は同じ姿であり続けている。

 新幹線の乗換え口に向かう。
切符を見せるが、果たしてこの区間で有効な切符かどうかを確かめているのか
定かではないが、13番線に上がる。子供がはしゃいでいるのが目に入った。
振り返るとヘッドライトをギラリと輝かせて500系新幹線が入線してきた。
<のぞみ13号>博多行である。いつになっても新幹線は子供に好かれている。
速いもの、力強いもの、大きいものに男の子は憧れるからであろう。
ぼくが子供の頃、電気機関車の牽引するブルートレインが好きだったように・・・。

 ここで新神戸まで<のぞみ>に乗るのも悪くない。
旅の中でこれだけいろいろな列車に乗っておきながら、日本を代表する列車が
登場しないのはどうかと思うのである。しかし、最も遠回りをしなければならない
旅においてぐにゃぐにゃと曲がりくねるルートを<のぞみ>はまっすぐ伸ばして
しまう存在なので、あまり好ましくないのかもしれないと思う。
見送ることにする。

 5分後にも700系<のぞみ>がやってくる。
1000人以上が乗る16両編成の新幹線を見送っていると、自分がいかに
時代の流れに逆らっているのか実感できる。ぼくは各駅停車の“各駅停車”を
待っているのだ。12時20分、300系新幹線が入線してきた。
<ひかり267号>岡山行である。

 いまや<のぞみ>に主役の座を奪われたが、
国鉄が生んだ“夢の超特急”の名である。世界に鉄道の力を見せつけた
その功績は非常に大きい。<ひかり>のほうが本当は好きだ。
乗り込んで座ると同時に発車した。<のぞみ>が満席だったのに対して
<ひかり>はまだまだ余裕がある。どうも昨今の日本人は急ぎすぎる感じがする。
途中で<のぞみ>に追い抜かれるのがそんなに嫌なのだろうか。

 京都を発車すると、桂川を渡って東海道本線と離れる。
ぐんぐん加速して5分ぐらいで天王山が見えてきた。最長片道切符のルート上に
新幹線があるから乗っているのだが、もとより新大阪〜京都間は東海道本線より
東海道新幹線のほうが距離が0.1km長い。長いほうを選択しているのにも
関わらず、何を急いでいるのかと思う。鈍行列車と比べれば生活感もなく、
それはそれは偉大な乗り物である。

 新幹線は魔法の杖だと思う。
夜8時まで名古屋にいても、その日のうちに福岡まで行けてしまう。
こんな便利な乗り物はなかなかない。これだけの力を持っているからこそ、
選ぶほうの心次第といえる。新幹線のあり方は“急ぎたければ急ぐがよい”である。
乗り方を間違えればどんなに景色のいい路線もつまらなくなるが、見方次第では
如何様にもイメージは変わる。トンネルばかりの新幹線だが、明かり区間では
高架橋の上を走るから見晴らしがいい。これは東海道新幹線<こだま>に乗った
16日目でも感じたことである。姫路付近の車窓に姫路城が見えるのも新幹線
ならではなのである。

 新大阪駅21番線に着く。
JR東海と西日本のエリア境界である。すなわち、ここから71番目の路線である
山陽新幹線に入る。この先でJR東海に入ることはない。新大阪では大半の
乗客が降りた。乗り降りともにビジネスマンがほとんどである。自分だけが閑人の
ような気さえしてくる。いまはそれを楽しむ旅だからかまわないのであるが。

 この<ひかり267号>のような岡山行の<ひかり>は名古屋以西が各駅停車。
山陽新幹線に入ると格段に輸送断面が違うのでこのような状況が露になる。
新大阪を発車すると市街地を抜ける。大阪駅を発車するのと違って新幹線だと
淀川を渡らない。淀川を渡るといつも「あぁ。大阪に来たのだな。」という気になる。
だから今回は物足りなさもある。

 トンネルに挟まれた新神戸に停まり、六甲山地を貫いて走る。
六甲トンネルを抜けると明石海峡大橋が左後方にあり、まもなく西明石に到着。
下車してみるとにぎやかさのあまりない駅だと思った。各駅停車タイプの<ひかり>
や<こだま>しか止まらないからだろう。結局のところ、東海道と山陽を行き交う
人の数ということではないだろうか。

 途中下車印をもらう。
明石のタコを使った駅弁の“ひっぱりだこめし”を食べたことがある。
非常にうまかったのを覚えているので買おうか迷うが、今朝の加賀温泉駅で
買った“焼さば寿司”が残っているのでやめておく。

 ここからは山陽本線で引き返す。



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最長片道切符の旅・23日目
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