東津山駅で74番目の路線・因美線の旅を終える。

 反対側のホームに停車中の佐用行普通列車に乗り換える。
ここからは75番目の路線・姫新線である。津山行普通列車が
発車していってからドアが閉まる。乗換え客はぼくだけだった。

 17時34分に発車した。
東津山駅の構内配線は昔はもっと複雑だったように思う。
因美線・津山線を走る急行<砂丘>に乗ったのは14年前になるから
やはり合理化の波に呑まれたのだろうか。いかにも小さなローカル線の
分岐駅といった簡略化された配線になっている。

 東津山を出ると、播磨平野に向けて淡々と走る。
中国山地は地形状の年齢でいうと老年期で、特に山陽側は浸食作用が
ほぼ終わっているから険しい山も谷もなく、車窓の眺めも平凡だ。
姫新線は姫路と伯備線の新見を結ぶローカル線である。
1両のディーゼルカーは平凡な山間風景に似合うスピードでのんびり走る。
車内は高校生などでいっぱいであった。

 ローカル線には3種類あるように思う。
1つめは小さな町々を結ぶもの。2つめは山を越えて中核都市を結ぶもの。
最後は大都市から伸びる盲腸線のようなものである。
姫新線の場合は区間ごとに区切られているようである。
美作大崎、西勝間田と車内に変化はなかったが、勝間田、林野で
空席が目立つほどまでに乗客が減った。
この辺りまでが津山の都市圏らしい。

 東津山なら津山市内。そこを出ていくつか駅を過ぎれば
風景はすっかり田舎になる。山陽本線に乗っていると中小都市がいくつも
あるので、行けども行けども何かしらの近代建築が目に入ってくる。
しかし、こうして見るとローカル線はやはり違うなという気になる。

 中国山地の南にある浅い谷の山里を結び、
楢原、美作江見、美作土居、上月と停まる。18時34分に終点・佐用に着く。
こういったローカル線の場合、普通なら接続がいいようにダイヤが組んで
あるはずだが、どういうわけかすこぶる接続が悪い。乗客の半分は
改札から佐用の町へと消えて行き、残りの半分は智頭急行の改札へ。

 16時27分に発車した智頭から津山経由で2時間かかったが、
智頭急行なら45分、特急を使うと30分かからず、便利なことこの上ない。
智頭急行の開業がこの地方にもたらした恩恵は想像の域を超えている。

 駅員どのが話しかけてきた。
「どこまで行くの?姫路?だったら智頭急行の普通列車がもうすぐ来るよ。
切符が違うから急いでね。」
という。が、ぼくは短絡されるのも急いでいかれるのも困る旅人である。
その行為はありがたいし、温かくてうれしいが、最長片道切符であるがゆえに
断らざるを得ないのは残念だ。

 智頭行と上郡行の普通列車が発車していく。
結構乗っているようだ。ここで1時間以上待たねばならない。
乗ってきた姫新線のディーゼルカーも数人の乗客を乗せて
津山へと折り返していった。倉吉行の特急<スーパーはくと>も岡山行の
<スーパーいなば>も盛況で、ものすごい勢いで発車していく。

 19時23分、佐用終着の普通列車が現れ、折り返し19時43分発の
姫路行普通列車となる。乗り込んで智頭駅前で買ったいなり寿司を食べる。
10人ほどの乗客を吸い込んで発車した。もはや日没後の
真っ暗な車窓であるが、月が出ているので楽しめないことはない。
沿線の灯りの数、車内から漏れる灯りで照らされる水田など、
風景の想像をすることぐらいは容易にできる。

 三日月という駅に着く。
佐用の手前にも上月という名の駅があった。
由来は知らないが、“月”の付く地名が多いようだ。夜空に輝く月も、
ほぼ満月であるし、いい夜である。

 西栗栖、千本に停まり、18時12分に播磨新宮に停車。
ここから姫路の都市圏に入る。しかし、マンションが目立ってくることもない。
家々は単純な切妻屋根のものから造りが非常に複雑なものになった。。
間取りも当然複雑なのだろうが、棟をずらすなどして屋根が幾層にも
なっている。新しい家でも金属板と瓦とを組み合わせて古い型を踏襲して
いるように見える。この地方は山陽側なので瀬戸内型の気候になり、
雨はもちろん、雪も少ない。屋根に金をかけてみても仕方ないように思うが
そんな単純な機能主義を超えたしきたりと意識が人々の中にあるのだろう。
重厚で堂々とした造りの家が多いのである。
これこそ“家”であり、住宅と呼んだほうが当てはまるものが多い昨今では
かえって新鮮に見える。

 次第に都市の灯も増え、車窓が華やいでくる。
本竜野からは、すれ違う区間列車もさらに増えて活気を取り戻すと
太市、余部、播磨高岡と停まって20時54分に終点の姫路駅1番線に到着。
75番目の路線・姫新線の東半分は終わりである。

 こんな時間なので夕食などあまり食べる気がしない。
先ほどいなりも食べてしまったので、ホームにあるスタンドで姫路名物の
“駅そば”を食べる。何とも手っ取り早い。ここの駅そばは、そばというよりは
冷麺のようなものだった。軽くかきこんだら駅前のビジネスホテルに入り、
早々に寝る。



79.寂びついた因美線

81.サンライズエクスプレス

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最長片道切符の旅・24日目
80.おぼろ月夜の姫新線
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