9月18日(日)

 朝4時半に起きる。

 毎度毎度のことのように思えるが、これで4日連続である。
今日はぐっすり眠れた。5時にチェックアウトして姫路駅に向かう。
宿泊地での滞在時間が短いと自分でも思う。

 姫路駅6番線に立つ。
この駅の山陽本線下りホームに立つときは大抵、岡山方面行の
普通列車をまつ青春18切符の旅である。だから今日はいつもと違って
非情に新鮮だ。5時31分発の岡山行普通列車も、ぼくを待っている
かのように7番ホームに停車中だが、乗らない。これほど普通列車に
乗る機会に恵まれる区間もそうないと思うからである。

 ということで、今日乗るのは最長片道切符の旅では
はじめてになる寝台特急である。ヘッドライトを明々と照らしながら
5時26分、寝台特急<サンライズ瀬戸>高松行が入線してきた。
1〜7号車が<サンライズ瀬戸>、8〜14号車が<サンライズ出雲>
出雲市行で計14両編成である。

 東京発22時ちょうどで、岡山着が6時27分。
利用しやすいことこの上ない。さらに、とかく寝台専用と思われがちな
寝台特急であるが、寝台料金不要で乗れる座席車がある。
“ノビノビ座席”と呼ばれるカーペット車両がそれで、5号車と12号車に
連結されている。旅行代理店でこの指定席特急券を購入したとき、
窓口の人がわからなくて時間がかかっていた。
要するに知る人ぞ知る存在なのである。

 ノビノビ座席にもぐりこむ。
カーペット敷きだが、雑魚寝というわけでもなく肩から上の部分には
仕切りがあるので隣の人の寝顔がそばにあるようなフェリーとは違う。

 2度目の山陽本線を加速して英賀保、網干、竜野と通過する。
相生で赤穂線と分かれると山間に分け入っていく。普通なら本線に
並行するローカル線の方が距離が長く、最長片道切符のルートも
そちらになりそうなものだが、山陽本線の場合は事情が異なる。

 山陽本線は全線で30%しか直線区間がなく、曲線ばかりである。
したがって並行ローカル線である小野田線、宇部線、岩徳線、呉線、
赤穂線のうち、山陽本線よりも距離が長いのが岩徳線と赤穂線。
岩徳線は旧山陽本線であった歴史的経緯をもつのでわかりやすい。
赤穂線は営業キロが57.4km(山陽本線は60.6km)、運賃計算上の
擬制キロが63.1km(山陽本線は60.6km)と、地方交通線であるが
ゆえにややこしい計算が必要になる。結局のところ、最長片道切符では
実キロで遠回りすればいいのだから、山陽本線回りになるのである。

 最長片道切符はきれいに遠回りをしてくれるのだなと思う。
そして数少ない特急列車の時間に合わせることさえできれば、
この区間は長くても何とか乗り越えることは可能である。
普通列車ではなく、好きな列車に乗りたいと思うし、旅を彩る列車は
多いほうがいいなとも思う。そういうわけで姫路泊としたのである。

 有年、上郡、三石、吉永、和気と山間のルートをたどるうちに
空が明るくなってきた。サンライズエクスプレスの名にふさわしい時間の
訪れである。車掌どのが切符の拝見に来た。見せると、
「お客様、姫路〜岡山間の乗車券はどれですか?
・・・・え?これ?えぇー・・・・・!」
長距離夜行列車の車掌もびっくりである。そりゃそうだと思う。

 徹夜勤務の車掌に目の覚めるような衝撃を与えたところで
3号車にあるミニロビーへ行く。就寝中の人たちに気を遣わずに済む
スペースはありがたい。夜行列車で迎える1日に欠かせないものは
やはり夜が明ける瞬間である。旅をしていてそんな美しい時間に
出会えるのはやはり夜行列車でなければならない。暗闇の中にあった
風景が御来光によって照らし出され、白んできた空は赤から青へと
移り変わっていく。その色のグラデーションはいつ見ても好きだ。
朝のすがすがしさを嫌だと思う人はいないはずである。

 吉井川鉄橋を渡り、万富、瀬戸と通過しておはよう放送が入る。
相生で分かれた赤穂線と合流して東岡山を通過する。7号車と8号車の
間の切り離し作業に入る旨が告げられて、岡山での乗換え案内が
放送される。車内がにわかに動き出した。

 夜行列車の朝は慌しくもある。
どの夜行列車にも夜から朝へと切り換わる駅がある。
<サンライズ瀬戸・出雲>なら岡山駅である。ちょっとだけ夜行列車を
味わわせてくれたのち、6時27分に岡山着。

 岡山駅は山陰・四国方面へのジャンクションである。
それゆえにいろいろな列車が集まる。新幹線とそれらの相互乗換えも
スムーズにするべく、ホームは改良工事がたけなわである。
広報の7・8号車の間では<サンライズ出雲>との切り離し作業が
行なわれ、ホームの駅弁屋に駆け足で行く人も見受けられる。

 降りるのも別にかまわないと思うが、
津山と新見での接続がうまくいかず、時間を持て余しそうである。
したがって、このまま四国に渡ってみようと思う。
幸いなことに津山から先が同じ列車になる。
<サンライズ瀬戸>は6時31分、高松へ向けて発車した。



80.おぼろ月夜の姫新線

  瀬戸大橋

82.昭和の夏

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最長片道切符の旅・25日目
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