9月20日(火)

 ビジネスホテルに入ってから気が付いた。
またパンツが破れていたのである。乗車時間は長くても尻はまったくと
いいほど痛くならない。それなのに・・・。
何枚目だろうか。捨てなくてはならない。
高校のときから穿いてきたから寿命だったのかもしれないけど、哀しい。

 米子駅に行って6時11分発の新見行普通列車に乗る。
朝の時間を使って、昨日<やくも15号>で寝てしまった分を
埋め合わせしようと思う。根雨で降りて5分後の普通列車で折り返せば
往復は可能である。

 根雨まで行ってから出雲市行普通列車で折り返す。
案の定、高校生でいっぱいだった。今日は平日である。
根雨を出ると日野川の谷を走る。谷間を雲が流れ、なんとも
名状しがたい眺めである。これだからローカル線はいいのである。

 この辺りは古代からの砂鉄の産地である。
「たたら」と呼ばれた集落の跡が随所に残っており、日本海に流れ込む
目の前の日野川は製鉄の“火”にちなむという。この砂鉄採取によって
発生した土砂が日野川の流れによって堆積したのが島根半島へ
伸びる弓ヶ浜だと言われている。

 国道とべったりくっつきながら、武庫に停まり、江尾で5分停車。
特急<やくも4号>岡山行とすれ違う。この江尾からはだんだん余裕が
なくなる。伯耆溝口でついに満杯になる。

 予想以上だった。
身動きも取れなくなり、右足は踏まれて左足は攣ってしまいそうだ。
うぬぬ。
下手に動いて痴漢に間違えられてもかなわぬ。
白い眼でじろりと見られても困るので、動かぬ方が懸命である。

 そのまま山陰本線との分岐駅・伯耆大山に着く。
向かいの普通列車に乗り換える人もいて、少し楽になったと思うと
次の東山公園駅で高校生のほとんどが降りた。こうやって苦しみながら
通学する高校生たちは、将来鉄道を利用したいと思うだろうか?
と疑問が湧く。合理化して編成を短くするのはよいが、
マイカーへの流れを加速させてはいまいか?と思うことがよくある。

 7時35分、米子着。
結局、景色を見るどころではなかった。
どうも米子に来るといいことがない気がする。しかし、伯備線には
昨日の車掌のこともあって、お礼参り程度にはなったかもしれない。
ぼくの好きな秀峰・大山は拝めずじまいになりそうだ。

 向かい側4番線に停車中の松江行普通列車に乗り換える。
やはり山陰本線はディーゼルカーでたどりたいと思う。真新しさのある
列車は確かに鉄道としてありがたいが、情緒というものが
欠けているのである。

 7時41分に発車すると、広大な米子駅構内を走る。
さすがに山陰最大の要衝である。
複線のまま県境を越えて、安来節の里・安来に着く。

 島根県に入ると県都・松江への流れが顕著になり乗客が増える。
中海が見えると荒島、揖屋に停車。子供の頃、揖屋(いや)という駅を
時刻表で見つけて思わず笑ってしまった覚えがある。その揖屋駅で
5分停車し、特急<スーパーまつかぜ4号>とすれ違う。
さらに次の東松江では<通勤ライナー>米子行ともすれ違う。
そういえば揖屋の手前の荒島では普通列車とすれ違ったし、
安来では特急<スーパーやくも6号>とすれ違った。
単線なので仕方がないが、すれ違いすぎだと思う。
早いうちに複線化するべきではなかろうか。

 東松江を出ると、中海と宍道湖をつなぐ矢田川に沿う。
この川を越える橋は松江市街地にしかなく、松江市東部のこの付近は
渡し舟で渡る場所である。車窓からとはいえ、はじめて見た。
漁船のような中くらいの船の後部に、自転車に乗った中高生が
5人乗っていた。

 8時16分、高架橋に上がり終点の松江に着く。
下車して通勤客に紛れながら途中下車印をもらった後、
4番線に上がる。8時20分発の宍道行普通列車に乗る。
どうやら木次線から松江まで乗り入れてきた列車の折り返しらしく、
車掌がいた。ぼくが旅人に見えたのか、鉄道マニアに見えたのか
わからないが、「トロッコ列車・奥出雲おろち号」のオレンジカードを
勧めてきた。無碍に断る気もおきず、代わりに木次鉄道部の
捺印をチケッターでもらう。

 松江をあとにすると、あとは宍道湖に沿って
乃木、玉造温泉、来待に停まる。そろそろ温泉にでも入りたい気分だ。
この調子で入るとしたら鹿児島あたりだろうか?

 8時40分、終点の宍道に着く。
宍道湖は見えないが、背後に山のある落ち着いた雰囲気の駅である。
線路が1本剥がされており、かつての木次線ホームだということは
容易に想像できる。3両編成のディーゼルカーはカーテンを下ろし、
ドアを閉めて留置線へと引き上げていった。




87.布原信号場

  弓ヶ浜のローカル線

  木次線の旅B 神話の里

89.星空の食堂車

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最長片道切符の旅・27日目
88.たたら跡
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