宍道で一旦最長片道切符の旅を中断する。

 前日の続きで木次線の未乗区間に乗りたいからである。
宍道駅で待っていると、8時50分に普通列車が入ってきた。
折り返し9時08分発の出雲横田行普通列車である。

 乗り込むと“木次線物語”という新聞があった。
木次の南にある下久野トンネルは山陰地区最長だという。
気付かなかった。こういうのを見るとついつい行きたくなってしまう。
他にも出雲横田駅のしめ縄の話があった。

 旅は一度行っただけではだめだと思うことがよくある。
はじめてのときは予備知識なしで行ったほうが新鮮である。
帰ってからいろいろな知識を仕入れて、いつの日か2度目の旅をする。
そのときは季節を変えてみるのもいいだろう。
幸いなことに日本には四季がある。
それぞれの季節によってその土地・路線の印象はまったく異なる。
例えば山陰なら夏はコバルトブルーの海、冬は荒波と曇天の日本海。
まったく別の路線なのである。

 日本は狭いと叫ばれがちであるが、それはとんでもない話。
外国と比べるからそう見えるだけであって、これだけの国土にこれだけ
様々な表情をもつ国は世界にいくつあるだろうか?
日本は四季というものをもつおかげで、旅する土地は本当は4倍にも
なるのだと思っている。雨の日か、晴れの日か、吹雪の日か。
そんなことまで考え始めたら本当はきりがない。
旅をする上ではこれ以上ない国に、ぼくはいると思う。

 南宍道を通過し、加茂中に停車。
民家に押し迫られるような線路の敷き方である。なまこ壁の家が多く、
出雲らしい風景になっている。この辺りも昨日の木次以南と同様に
ひなびている。飛騨の合掌集落よりもずっと日本的に見える。

 出雲地方は斐伊川にヤマタノオロチ伝説がある。
神話の里である。ヤマタノオロチは頭が八つ、尾が八つ、眼は赤かがち
(赤いほおずき)のようで腹はいつも血でただれ、背中に松や柏が生え、
八つの丘、八つの谷にわたるという物凄いオロチ(大蛇)である。
須佐之男命がヤマタノオロチをお酒に酔わせて退治し、オロチの
生け贅にされようとした奇稲田姫(くしいなだひめ)を救うという話である。

 そんな神話の里は、まるで現代に取り残されたような世界。
時間が止まっているように感じる。どこにも平成の匂いはない。

 幡屋という駅に停まる。
花の咲き乱れる小さな無人駅だった。こんな駅にも降りてみたいと思う。
熊本県にある三角線・赤瀬駅のようにハチに追いかけられるのは
もう勘弁してほしいのだが。

 幡屋の次は出雲大東駅。
木造の立派な駅舎に迎えられて、2人が下車。
降りてみたいと思う駅ばかりである。南大東までの間に小さな山を越え、
9時40分に木次に着く。

 改札口を出て折り返しの切符を買い、
9時49分発の宍道行普通列車に乗る。昨日、あれだけ木次線を
にぎわせた<奥出雲おろち号>は車庫で静かに休んでいた。



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