仙崎から3分で長門市に着く。

 引き続きこの列車は16時12分発の厚狭行普通列車になる。
82番目の路線となる美祢線は、カルスト地形で有名な秋吉台の
石灰岩地帯を走る。石灰石の輸送列車の行き交った路線だ。
それゆえに幹線として分類され、重貨物列車の往来に備えて
立派な線路が敷かれている。

 長門市を発車した列車は、板持、長門湯本、渋木、於福、
重安と停まっていく。坦々とした路線である。陰陽連絡路線の中でも
この美祢線が最も短く、46kmしかない。中国山地も西の端で
地形はなだらかである。

 人が降りる気配のないまま美祢に着く。
大量に高校生が乗ってきたので、座席から最後尾に避難する。
ロングシートで混雑をすれば身動きを取れなくなることは必至である。
ならばせめて線路を眺められるところに逃げておかねば損だ。
どんなに押されようとも窓が背中になければ車窓は楽しめる。

 満員の列車は南大嶺駅に着く。
かつて石灰石産出路線として活躍した大嶺支線の分岐駅。
鉱山からの大量輸送手段は鉄道が主役であった頃の名残である。
その大嶺支線跡も草は生え放題。発着していた1番ホームも、
2両分だけ新しいホームができて2番線の列車が使用している。

 趣味として、鉄道と車の違いは何かを考える。
車両ならば、自動車好きが抱く気持ちは羨望。鉄道好きが抱く
気持ちは憧れである。その差は手に入るか手に入らないか。
要するに、「ぼくもほしいなぁ」と思う気持ちがあるかないかである。
手に入る自動車はそれをいじる楽しみ、手に入らない鉄道は
追いかける楽しみとに分かれていく。

 こんなたとえを持ち出したのは他でもない。
この大嶺支線から、線路と道路の違いを感じたからである。
それら2つの“路”の違いは、草が生えるか生えないかにある。
道路はひび割れでもしない限り草など生えてこないが、線路は枕木と
バラストの間から芽が出る。最終的には自然に還るか還らないかの
違いにまで発展する。そして自然に帰した場合、レールは錆びて残る。
朽ちてなお、人の足跡として残るのである。この差は大きい。
いかに鉄道が風景に融けこむものかを示している。
道路によって動物の活動領域が寸断された話は聞くが、鉄道では
聞いたことがない。我田引水かもしれないが、自然に帰するとは
そういうものではないだろうか。

 南大嶺を発車した列車は、四郎ヶ原、厚保、湯ノ峠に停まり、
終点・厚狭には17時18分に着いた。82番目の路線・美祢線にも
北海道の夕張線のような栄枯盛衰の跡があった。

 厚狭からは5度目の山陽本線となる。
17時45分発の下関行普通電車に乗る。広島からの
快速<シティライナー>の続きであるから混雑している。
埴生、小月、長府と停まる。

 昨日のように車内改札はないみたいなので、
こちらから車掌室に出向いて下関車掌区の印をもらう。
新米車掌どのが出てきて応対してくれた。
「ほほぉ。ちゃんと押さなくてはいけませんね。」
と言って丁寧に押してくれた。
このくらいのほうが気持ちのよいものかもしれない。
車掌室の中でベテラン車掌と笑いながら話している。

 新幹線の交差する新下関、先ほどの山陰本線と幡生で合流する。
本州用の電気機関車が多く停まっている幡生操車場を通過。
次は下関。九州の玄関口となる駅である。




97.列車という名のゆりかご

99.関門海峡浪漫

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最長片道切符の旅・29日目
98.石灰岩地帯
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