最長片道切符の旅における山陰本線の旅は
長門市で終わりである。

 しかし、もう一つ山陰本線がある。
魚市場のある終着駅・仙崎までの枝線がそれである。
これにはまだ乗ったことがない。
長門市から140円の切符を買って2番線で待つ。
仙崎行は1日6往復で、そのほとんどが美祢線への
直通列車である。時間はあるので仙崎まで行っても
スケジュールには影響しない。

 15時39分発の仙崎行に乗る。
乗客はぼく以外に1人だけ。長門市を発車した列車は
山陰本線と分かれ、民家の軒先のか細い線路を走る。

 程なくしてホームと行き止まりが見えてきて
15時42分、終点・仙崎駅に着いた。小さな駅だが
駅前はきれいに整備されている。魚市場も近い。
ここは長門市の漁港で水揚げされた魚介類を運び出す
“鮮魚列車”の発着駅だった。2本あったような敷地の
広さだから、うち1本は剥がされてたのだろう。
いまやワンマンのディーゼルカーが発着するだけと
なったが、高校生の通学路線として残っているのである。

 魚市場と終着駅とはよく似合う気がする。
どんな漁港にもある魚市場と、
どんな盲腸線にもある終着駅は確かにどこにでもある。
しかし、仙崎のように魚の香りの漂う終着駅は
なかなかない。魚は魚、鉄道は鉄道だとでも言いたげだ。

 長門市から仙崎まで2.2km。
すぐに着いてしまったが、仙崎港は沖合の青海島へ
向けて伸びる砂嘴の上にある。昔はかつぎ屋の
おばさんがたくさんいたのだろうなと思う。
山陰本線は行商列車が走っていたほどに魚介類が
おばさんたちの手で行き交った路線である。

 線路の行き止まりの陰から次々と高校生が現れて
乗り込んでいく。仙崎港に水揚げされる魚たちが
駅舎の壁に描かれている。地元の小学生によるものと
予測はできるが、仙崎らしさというか、
趣を失っていないのがほほえましくもある。

 仙崎かまぼこで有名な魚たちが描かれていると
思ったが、そうではない。仙崎かまぼこは原料が
エソでなくてはいけないらしい。見栄えのしない小魚だが、
身は透き通るように白くて弾力がある。
近年はスケトウダラのすり身の冷凍が
出回っているらしいが、いまはどうなのだろうか。

 行き止まりには花が咲き、太陽がそれを照らす。
それ以上先に伸びることも輝くことも知らない錆びついた
線路をあとに16時01分、折り返し厚狭行普通列車に乗り込んだ。




最長片道切符の旅・29日目・益田〜長門市

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