9月27日(火)

 今日は短い旅である。

 朝7時に起きて準備をし、福間駅に向かう。
やはりラッシュであった。改札を出るなり、12両編成の快速電車が
出てゆく。まだ走っていたのかと思った。快速と呼ぶには停車駅が
多すぎる列車である。福岡都市圏にも通勤快速などを設定すれば
いいのにと時々思う。大都市では当たり前、でも九州では前例がない
といった芸当をするには、九州人は向いてないのかもしれない

 福間始発の普通列車に乗ろうと思う。
2番線に停車中の電車に乗り込んで発車を待っていると、3番線に
やってきた快速電車から、座席を求める人たちが乗り換えてきた。
そのあとには通勤特急<きらめき1号>が到着する。福間に特急が
停まるようになろうとは、時代が変わったものだとつくづく思う。
確実に通勤客は増えて、12両編成の特急電車も満員だった。

 8時36分、福間駅を出る。
西郷川を渡り、左にカーブする築堤の上から、右側に小高い空地が
見える。11年前の12月に、東京行のブルートレイン<あさかぜ4号>
の最終列車を見送った場所。いまでも覚えている。いまでは横に
マンションが建っていて福間駅側は見えなくなっているが、そこで
自転車に乗った1人の中学生が見送っていたことを知る人は少ない。
当然ではあるが、大好きだった列車の最後の車窓に映ることが
できてよかったと思っている。

 パークタウンに近い千鳥、団地に近い古賀、筑前新宮、
大学もある九産大前と停まって車内は満席近くになる。香椎線が並ぶ
香椎ではさらに乗客が増える。香椎浜は松本清張の“点と線”にも
登場した。いまは福岡市東部の副都心として人口が増えている。

 千早では西鉄宮地岳線が並ぶ。
かつては国鉄香椎操車場があって機関車が屯していた。博多まで
行くときは、子供のぼくにとって最も楽しみな場所だったが跡形もない。
マンションが建ち並ぶばかりである。時間の流れ、時代の移り変わり
というものは時として非情だと思う。西鉄宮地岳線の電車も、齢40を
とうに越しているだろうに健気に走り続けている。

 その西鉄名島駅を過ぎた頃に多々良川を渡る。
長い鉄橋だ。西鉄は連続アーチ橋で越え、国道3号線も見える。
片側3車線の広い道路だが、雁ノ巣飛行場まで戦闘機を輸送する
目的があって建設当初から道幅が広く、これまで拡幅工事は
行なわれていないという。

 多々良川を渡ると高架橋に上がり、新しくなった箱崎駅に着く。
箱崎宮の最寄り駅だがホームの行灯はない。趣のある古い駅舎も
なくなり、高架化により東へ移転して箱崎宮から徒歩1分だったのが
8分になった。かなり好きな駅だったのだが。

 箱崎宮は海の安全を願う神で、参道はまっすぐ博多湾まで伸びる。
香椎の香椎宮はお産の神、福間の宮地嶽神社は家内安全・商売繁盛
の神、東郷の宗像大社は交通安全の神という具合に社が多い。
この土地の歴史の古さを物語っているように思う。信仰心の厚い
地方豪族が昔からいたということである。

 箱崎を出てすぐに吉塚に着く。
ここで降りるのだが、満杯でなかなかドアに近付けない。周囲の迷惑を
承知の上で何とか下車できた。ラッシュ時にうまく下車できる方法は
ないものだろうか。

 吉塚駅も変貌していた。
箱崎駅と区別がつかない。それぞれの駅にあった個性というか
風情はなくなった。こうもあっさりと作り変えられるものなのだろうか。
途中下車印をもらうと
「よく回ってこられましたねぇー!今日肥前山口ですか?明日?
お疲れ様です。よい旅を!」
と言ってくれた。この言葉もあと何回聞けるだろうか。

 4番ホームに上がる。
特急<リレーつばめ>や<有明>、<ゆふいんの森>、
そして後ろを山陽新幹線が走っていく。
動脈の中の静かな場所のようだ。
いろいろな列車が行き交っている。



109.東筑軒

111.冷水峠

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110.通い慣れた路
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