佐世保線と分かれて長崎本線は南に進路をとる。

 六角川を渡って肥前鹿島駅に停車。
何度来ても特急停車駅にしては小さな駅だ。発車してから
車掌どのにチケッターで最長片道切符に日付を入れてもらう。
そして旅の最後の思い出に、とお願いをして車掌室と反対側にある
乗務員質に入れてもらう。あくまでも邪魔はしないことが条件。
そうそう入れてもらえるものではない。入ってはいけないのである。

 そこの椅子に座り、窓を開けて朝の空気に触れる。

 吸い込むとすがすがしくて気持ちがいい。
1つの列車にも1人の車掌であった。肥前七浦で運転停車して
上り列車とすれ違うと、左手に朝日に輝く有明海が現れる。
まばゆい太陽に向けてブルートレインは走り、金色に輝きながら
汽笛が鳴る。やはり夜行列車はいい。
そして空はどこまでも深く青い。

 車掌室の横で無線交信を聞くのが好きだ。
聞かれても困るような内容はない。発車の合図は車掌が出す。
「35列車・運転士さん。こちら35列車車掌、どうぞ。」
「こちら35列車運転士、どうぞ。」
「35列車発車!」
「35列車発車ー!」

 有明海岸は半円形の小さな湾が連続していて、
湾岸の中央部、すなわち湾の最奥部に半農半漁の集落がある。
列車は小さな駅を通過すると右へカーブしながら緩い勾配を登り、
岬の付け根で左へ曲がると、右前方に次の集落を抱いた湾が
現れる。ということを繰り返しながら走る。単調ではあるが、
潮風を浴びながら味わう海辺の風情は心穏やかになる。

 肥前飯田、多良を通過し、里信号場のある湾は
180度カーブをする。右に左にカーブを繰り返して肥前大浦、
小長井からは長崎県に入る。湯江で再び運転停車して
博多行の特急<かもめ>とすれ違い、有明海越しに
頂を雲が覆われた雲仙が現れる。

 その有明海と離れて小江、肥前長田、東諌早を通過すると
左から島原鉄道、右から大村線が現れて8時12分、諫早着。
ここで最長片道切符のルートから外れることになるが、終着の
長崎は目前なのでいってみよう。この2ヶ月弱で訪れていない
県庁所在地は四国と沖縄を除けば長崎だけなのだ。

 通勤客が並ぶ諫早駅をあとにする。
スピードを上げて西諫早を通過。喜々津から新しい線路に入ると
市布で運転停車。なんと後続の特急<かもめ1号>に道を譲った。
博多を32分後に発車した電車特急に、諫早で5分差にまで
詰め寄られ、ついには追い抜かれてしまったのだ。有明海に沿って
ゴトリゴトリと走ってきた客車列車に比べれば、電車特急の
駆け抜ける様は、それこそまさに疾風であった。

 もう急ぐまいと悟ったのか。
寝台特急<あかつき>は肥前古賀で博多行特急<かもめ>と
普通列車を待つために11分運転停車。特急とは思えぬような
時間の流れ方である。のんびりしている。

 市布から現川、浦上を通過して終点・長崎到着の放送が流れる。
「夜行列車の長旅おつかれさまでした。まもなく終点。長崎に到着
いたします。どなたさまもお忘れ物などなさいませぬようご仕度
ください。本日はブルートレイン・あかつき号ご利用いただきまして
ありがとうございました。」
ぼくが大のブルートレイン好きだというのを知ってか、
そう放送してくれた。そんなことまで配慮してくれたとは思えぬが。

 8時54分、青い客車を連ねた<あかつき>は
長崎駅4番線に静かに停車した。朝日がまぶしい。
活気のある町だなと思いながら、13分後の普通列車で折り返した。




113.手書きの指定券

  大村湾

115.ハイビスカスの花

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最長片道切符の旅・34日目 最終日 
114.あかつきの空
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