9月29日(木)

 名古屋まで戻らねばならない。

 昨日最長片道切符の旅を終えたばかりだが、
この期に及んで“どんな風に戻ろうか”と悩む。

 答えはやはり夜行列車。

 南宮崎発の寝台特急<彗星>にしよう。
夜行として乗ったことがないからである。
その上、明後日・10月1日のダイヤ改正で廃止される。
いつかは乗るつもりでいた列車がなくなるとあっては、
乗らずにいたら後悔すること必至である。
思い切ってB個室寝台をとった。

 しかし、始発の宮崎まで行かねばならない。
なんとなく小倉から乗れば問題ないが、
始発の宮崎から乗らねばならない。
そんな気がするのである。

 ルートは5つ。
@日豊本線経由
A熊本から南阿蘇鉄道と高千穂鉄道で延岡へ
B八代から肥薩線と吉都線経由で都城へ
C九州新幹線で鹿児島まわり
D肥薩おれんじ鉄道で鹿児島まわり
他に豊肥本線で大分を回ることも考えられるが、
間違いなく南阿蘇鉄道に乗りたくなる。
しかも先日の台風で高千穂鉄道は
鉄橋が流失する憂き目に遭っている。
復旧の目処は立ってないらしい。
九州山地を経由するのはあきらめた。

 肥薩線も接続が悪い。
肥薩おれんじ鉄道も時間がかかり、宮崎から彗星に
間に合わないかもしれない。それでは本末転倒なので、
九州新幹線になる。あとは新八代までいかに行くか。
結局のところ、乗り継ぎ乗換えで行くことにした。

 家を出ようかと思うところで、もう裏の家とは
お別れだと気付く。生まれてこの方住んできた家なのに、
地震に被災してしまって建て替え中である。
見ていて込み上げてくるものは多い。

 福間発8時27分の快速電車→博多発9時ちょうどの
<かもめ9号>→鳥栖発9時25分の快速電車→
羽犬塚発9時51分の普通電車→大牟田発10時23分発の
普通電車→熊本発11時28分の<九州横断特急>→
新八代12時19分の<つばめ41号>。
これで鹿児島中央へ行ける。福岡都市圏の通勤時間帯は
やはり満員で、特急<かもめ9号>も満席。
三脚とカメラを持つ自分には酷だが、耐えるしかない。

 乗換えを増やしたのは失敗だったかもしれないが、
乗車時間が少ない分だけ早く着く。三池炭田のあった
大牟田から普通電車で田原坂を越え、熊本へ。
<九州横断特急>は1両にぼく以外は2人。
全部あわせても20人いるかわからない。
福岡に達しない地方特急は空いているのも九州の特徴。
高速道路の発達により、マイカー化の流れは
止まらないのである。“九州の観光地はひとつひとつ”と
揶揄されるほど、観光地同士の連携が悪いのも原因だ。

 鹿児島中央で“さつまの旅路”という駅弁を買う。
黒豚とキビナゴを黒酢でしめて手巻きにしてあった。
鹿児島で魚と言うと、枕崎のカツオと錦江湾のキビナゴ。

 西鹿児島駅だった頃から慣れ親しんだ5・6番ホーム。
ここで列車を待つのも久しぶりなのに、相変わらずハトは
飛んでくる。都城行普通列車に乗り、錦江湾越しに桜島に
別れを告げ、<きりしま16号>に乗り換えて宮崎へ。

 ビールとつまみを買い込んで夜に備え、南宮崎駅1番線で
待っていると青い客車が推進運転で入線してきた。
17時25分発の寝台特急<彗星>京都行である。
長距離夜行列車が入線してくるときの高揚感が
いつものように体を包み込む。

 2号車の2階の個室に入る。
寝台料金6300円はこれまでの宿泊代としては最も高いが、
移動しながらという条件を考えると安くはないだろうか?
鏡にテーブル、時計とアラーム、ラジオ。テレビと風呂はなく、
トイレ、洗面台が共用であること以外はビジネスホテルと
変わらない。中にはシャワーすら設置されている夜行列車も
あるくらいだから。。。
日本中のビジネスホテルに泊まってきたわけだが、
共用設備が多いホテルもあった。決して夜行列車が
劣ったものとはぼくは思わない。

 雨の影響で対向列車が遅れているらしく、
車掌がホーム上でドタバタしているのが見えた。
6分遅れで発車する。水量豊かな大淀川を渡り、宮崎駅着。
ホームで列車を待つ人がこちらを見ている。
ブルートレインはやはり特別な列車らしい。

 個室を覗いていく人はけっこういる。
この個室は明朝まで自分のみの空間になっているから、
安心して靴下も脱げるし、ビールを飲むのも駅弁を食べるのも
遠慮は要らない。

 今日の駅弁は“かしわめし”。
折尾名物で、東筑軒の駅弁。駅弁と言うと値段が高いという
イメージを持つ人が多いが、630円と730円の弁当しか
販売していない。九州最初の駅弁でもある。
安さとうまさではこれの右に出るものはないと思っている。
630円で満足できる。
やはり駅弁は九州がいいと思う。
全般に薄味で控えめだ。

 宮崎を発車すると雨はさらにひどくなっている。
こんな激しい雨は釧路湿原以来かなと、天気には概して
恵まれたこれまでの行程を思い返す。
この<彗星>は最後の列車と言ってもいいので、
運転打切にならなければ何時間遅れてもいい心構えだ。

 高鍋を出て小丸川を渡る。
日向灘はどんよりとした雲の下にある。空模様でこんなに
海の表情が変わるとは思いもよらぬこと。天気次第でまったく
別の路線のようだ。日向市、延岡と停まりながら日没を迎える。
11分遅れとの放送があった。宗太郎越えにかかる頃、
一眠りしようと電気を消す。
個室なので誰にも邪魔されない。
気楽なものだ。




116.最後の途中下車

   夜空に輝く二重奏

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旅の終わりは個室寝台車 
                    特急<彗星>14時間
あとがきは悪あがき
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