9月23日(金)

 お彼岸だが、ちょっとした旅に出てみようと思う。

 その前に腹ごしらえでラーメンを食べる。
筑前新宮駅から徒歩5分のところにある
“長浜ラーメン・かしい亭”。
博多の人間にとって、ラーメンはおやつである。
博多特有の替玉をしてはじめて食事として成立する。
相変わらず細麺でうまい。

 ここのチャーシューは好きである。
とろとろのチャーシューだの何だのこだわる人がいるが、
ラーメンでチャーシューがでしゃばっていはいけない。
麺とスープの味わいが薄くなってしまう。
そういう意味でかしい亭のラーメンはバランスが絶妙だ。

 福間駅発15時02分の快速電車に乗って、
香椎駅で降りる。やはり九州の暑さは違うなと思う。
香椎駅から乗るのは香椎線である。
この路線はどこかの主要駅から分岐するという形ではない。
したがって、両端が始発駅であり、両端が終着駅である。
こんな形の路線はJR多しといえどここだけである。
15時21分発の西戸崎行普通列車に乗って、
まずは西戸崎を目指す。

 香椎を出ると鹿児島本線と並走し、
九産大前の手前で分岐して緩やかな坂を上る。
左にカーブを切って切通しを抜けると鹿児島本線と
立体交差する。まもなく左から西鉄宮地岳線が
寄り添ってきて、和白駅に停車する。

 和白は和白干潟で知られる土地である。
ここは現在、西鉄宮地岳線と立体交差しているが、
元々は平面交差であった。
下り・宇美行普通列車とすれ違う。
何度も利用したことがある。
高校受験の帰りだったりもしたっけ・・・。

 和白を発車したら西鉄宮地岳線をくぐり、
少しだが博多湾が見える。その手前が和白干潟で、
渡り鳥たちの生活の場である。左手にある畑が
団地に変わったら奈多に停車する。
この付近に友人は多いので、こういうところを
訪れるのも悪くないなと思う。

 右側にあった県道と踏切で交差すると雁ノ巣駅に着く。
レクリエーションセンターとホークスの2軍練習場がある。
昔、この近くの波止場に兄弟で釣りをしにきたことがある。
エイを釣った。その頃はいまのように住宅地が
広がっておらず、駅舎も無人駅とはいえ立派なものがあった。
こんな待合室だけのようなものではなかった。

 さらに歴史を遡れば雁ノ巣は、飛行場があったところ。
戦時中の特攻隊の基地というと、鹿児島の知覧が
よく知られているが雁ノ巣もそうだったのである。
いまは福岡市の住宅地として人口が増える一方の
この土地に、それを知る人は少ない。

 雁ノ巣を出ると、海ノ中道と呼ばれる砂嘴に出る。
海流の影響で土砂が堆積して九州本島から砂浜が
伸びていき、金印で有名な志賀島まで達した。
実際は志賀島と海ノ中道はつながっていないが、
小さな橋でひょいと渡れる幅の水道がある。

 海ノ中道の砂嘴の上を列車は走る。
砂嘴の幅が1kmほどあるので両側が海とは言えないが、
砂丘の中に線路はある。これが海ノ中道といわれる所以で、
左が博多湾、右が玄界灘である。

 水族館・プールなどのレジャー施設がある海浜公園の
最寄り駅・海ノ中道駅を出ると左に防砂林と博多湾を
臨みながら15時44分、終点・西戸崎に着く。
きれいで小ぢんまりした駅のそばには堂々と
マンションが建っていた。

 折り返し・宇美行に乗る。
香椎線は何年かぶりに乗ったが、懐かしさとともに
恥ずかしさもある。JR全線に乗ってみようと思い始めて、
最も身近だったローカル線に終点の宇美まで
乗り切ってなかったからである。
灯台下暗し・・・。
こうやって北部九州には断片的に乗り残した路線が
いくつかある。廃止の噂は聞こえてこないが、
乗っておかねばならない。

 15時54分発の宇美行は香椎駅に着いた。
香椎は福岡市東部の中心地区ゆえに乗降客数も多く、
九州では4番目である。香椎線への乗換え客も
合わせるとどうなるのか。

 次の香椎神宮駅が開業するまでは香椎宮の
最寄り駅でもあったので、ホームの灯りも社殿風に
してある。他には箱崎宮の最寄り駅である箱崎、
宮地岳神社の福間、宗像大社の東郷などがそうである。
しかし、箱崎は建て替えられてしまっているので
どうなっているのかわからない。

 香椎を発車すると左にカーブしてまもなく香椎神宮着。
香椎宮はお産の神様でそんなに大きな社ではない
イメージなのに駅は“神宮”としているのが解せない。
森もあって趣深いのだが。

 次は舞松原、新幹線高架下の土井、
広い構内の伊賀と停まる。土井付近はニュータウンが
形成されており、香椎線沿線では
最も宅地化の進行しているところである。

 築堤の上に上がって篠栗線と交差する長者原に
停車する。もともと立体交差しておきながら、
国鉄買収前は別会社だったために駅のなかった場所。
国鉄分割民営化後に利便性向上を目的に
駅が開業すると、町が変貌を遂げた。

 このおかげで同じ駅を2度通らない
最長片道切符のルートも変化した。
そんな因縁のある長者原駅をあとにする。
はじめてこの駅に来たのは、
分割民営化と時を同じくした開業後間もない頃だった。

 兄弟3人で訪れたのである。
小学校に入学する1ヶ月のことで、
「どう見ても小学生じゃないか!」
と駅員に言われたのを、
「まだ保育園を卒園していない保育園児なんだ」
と兄2人が説明していたのを覚えている。
いまはその改札は自動改札になっていて、駅員の姿などない。
改札とて人の温もりがあった頃の出来事であった。
この世知辛い世の中で、果たして子供だけで旅をする
機会などそんなにあるものだろうかと思う。

 そんなことを考えているうちに酒殿、須恵を過ぎて
須恵中央に着いた。勾配の途中にあり、
周囲はまだ収穫の終わっていない水田である。
本当に福岡市のそばなのかと思う。
塾に通う中学生が反対列車を待っていた。

 竹林を抜けて新原に停まると、母親に抱かれた子供が
窓を開けているぼくに向かって手を振っていた。
ああやって無邪気になれたらいいなと思うことが時々ある。

 16時53分、終点の宇美に着く。
かつては勝田線という路線が吉塚から筑前勝田まであり、
途中にもう一つの宇美駅が存在した。
香椎線と勝田線の宇美駅は離れていて、
はじめての人にはわかりづらい「鉄道迷所」だった。
香椎線が旧博多湾鉄道汽船会社線、
勝田線が旧筑前参宮鉄道線という別の路線だったことが
2つの宇美駅の成因である。

 ぼくが旅人に見えたのだろうか。
おばさんの駅員さんが話しかけてきた。
自分も旅をするのが好きで、時刻表を見ていたのが奏功して
この駅に勤めるようになったのだという。
委託職員らしいのはすぐにわかった。
正社員を置くよりは安く済ませるように委託駅に
なっているのだろう。列車こそワンマン運転だが、
駅員はほとんどの駅に配置されている。

 人懐こそうなおばさん駅員と会話して、
折り返し時間を過ごす。発車時刻が近づくと
「また来ます。」
「また来てください。」
の言葉を交わして宇美駅をあとにした。




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