神戸駅から一つ西へ行ったところに兵庫駅がある。
新快速は停まらない駅なので、何かと見過ごしがちであった。

 階段を下りると“和田岬線のりば→”と書かれた看板がぶら下がっていた。
そちらに目を向けると乗換えの改札口があった。同じ在来線乗換えというのに
もう一度改札をくぐらねばならぬとは理解しがたくもある。有人改札を抜けて
50mほど歩くと6両編成の通勤電車が停車中であった。
18時ちょうど発の和田岬行である。

 今日の日程を組む上ではここが最大のネックとなっていた。
この路線に乗るためにどれだけ頭を抱えたかわからない。朝7往復、夜12往復
という本数の多い路線だが、土・日曜運休の列車がほとんどである。しかも
日曜は1往復といういまどきめずらしい路線なのである。わざわざ晴れの日曜日
ではなくて、雨なのに月曜日を選んだのもそのためである。

 朝の列車は兵庫発9時の列車が最後であるが、新快速が停車しない
兵庫駅に9時に着けるかどうかはなかなか難しくもあった。無理ではないものの、
乗れるかどうかは兵庫駅の構造次第。迷わないとも限らない。
よって、名古屋からは必然的に夕方の列車となる。今日の場合、
赤穂線、宇野線、吉備線を乗ってからという順序で組めば問題ない。

 こういう事情があったために、50m歩いてホームに立つと、
ようやくたどり着いたという感情が余計に大きくなる。
ただし、車内はガラガラであった。長い編成に5人もいない。
おや?と思うが、どんな路線なのかは乗ってみればわかるだろう。
18時にベルが鳴り、ドアが閉まった。

 複々線の山陽本線からは一段低いところにホームがあり、
まったく別の路線のようだが、実はれっきとした山陽本線である。
支線というか、枝線として扱うのが正しいが、“和田岬線”と案内されていても
戸籍上は山陽本線なのだ。線路配置から見ても別路線だと思う。

 ゴトリゴトリと分岐器を渡ってから、左にカーブして本線と分かれる。
正直に言うとワクワクした。たまらなく気分が高揚した。
このままカーブが続いて和田岬駅に着いてしまうのではないかと思うほど
曲がると高速道路をくぐり、運河を渡る。複々線のイメージがある神戸付近の
山陽本線とはまったく趣を異にする下町の線路である。
数年前まで非電化で、ディーゼルカーが走っていたのもうなずける。

 右側に近畿車輛の工場へ専用線が分かれてしばらくすると
スピードが落ちて終点・和田岬駅到着。
わずか3分、2.7kmの道程であったが、山陽本線の大動脈ぶりとのギャップが
おもしろい。そして和田岬駅はというと無人駅であった。
停留場と呼ぶのには大きすぎる。都会の中の空白地帯のようなところである。
駅舎もどこか肩身が狭そうだ。

 無人の割には乗ってくる人が多い。
切符はどうするのかと思ったが、それもそのはず。和田岬線を利用するには
先ほどの兵庫駅の乗換え改札を通らねばならない。和田岬線専用の
のりこし清算機があったのもそのためだろう。人員配置を兵庫駅にのみ
絞れるというコスト削減の仕組みであった。

 乗客の全員が会社帰りの人だと一目でわかる。
和田岬行の電車はこの人たちを迎えに来る列車であったらしい。
無人の駅舎の中に立つと、駅前には大きな道路、その向かい側の歩道には
こちらに渡ってくると思われる信号待ちの人々。
その人たちに紛れて、ぼくも7分後の折り返し列車に乗った。

 あとは、名古屋へ帰るだけである。


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