11月9日(水)〜10日(木)

 旅に出ようと思う。

理由はない。旅に出たいからである。
列車に揺られていたいからである。
旅のあとさきを考えてないようだが、時刻表をやりくりしていると
やはり旅に出たくなる。

 50日間列車に揺られつづけた最長片道切符の旅から
1ヶ月が経った。本当に長らく列車に乗っていない気がする。
今回は、ほとんど旅をするに至らなかった四国を旅しようと思う。
四国周遊切符を手に、名古屋駅へ向かった。
旅立ちはもちろん夜行列車である。

 四国は名古屋からは遠くないので、高松行の寝台特急
<サンライズ瀬戸>は名古屋を通過してしまう。
よって、1:13発の浜松が最寄の停車駅となる。
浜松までの運賃を合わせても新幹線より安く済むので
あとは手間の問題となる。
1泊の宿としての夜行列車、翌朝7時過ぎに四国に上陸できる
利便性を考えると、それに合わせて一日のサイクルを
回すことぐらい容易いことである。

 浜松行最終の新快速に乗り込む。
今回は荷物が少なく感じられるが、三脚などの装備が
増えている。ホームには少々並びづらいが乗ってしまえば楽なもの。
満員の新快速は東海道を疾走する。
四国へ向かうというのに名古屋から東へ向かうのも奇妙だ。
大いに無駄なことをしているようだが、翌朝早起きをして
時間を気にする必要がないのである。不都合なことなど何一つない。

 23時46分、終点の浜松に着く。
改札を抜けるとコンコースは閑散としていた。こんな時間なら
当たり前なのだがどうにも本を読む以外に時間をつぶす術は
なさそうだ。ホームへと戻る。

 浜松は大きな街だなと思う。
都会の風吹くホームにたたずんでいると、10分と空かずに
貨物列車が走っていく。東海道はやはり大動脈である。
昼は1000人規模で新幹線が走っていれば、夜は1000t規模で
貨物列車が走る。人と物の流れが最も見えやすい形に
なっているのも鉄道のよさかもしれない。線路からは一歩たりとも
外に出られないのが鉄道の弱点であるが、
こんな狭い幅の道を何千人という人が時速200km以上で移動し、
ぶつかることなくすれ違う。こんな移動手段は鉄道だけである。

 助役らしき人に声をかけられる。
「どこまで行かれますか?」とのこと。あてもなく列車を
待っているように見えたのだろうか。終電はとっくに
出てしまっているので訊いて当たり前である。
寝台特急<サンライズ瀬戸>に乗る旨を次げて了解を得る。

 午前0時半、出雲市行の寝台特急<出雲>が発車していった。
静かに走り出していくさまはまさに夜汽車であった。

 それから30分後、闇を切り裂くヘッドライトとともに
2階建ての寝台列車が現れる。今晩の宿、寝台特急
<サンライズ瀬戸・出雲>高松・出雲市行である。1〜7号車が
<サンライズ瀬戸>なので5号車に乗ることになる。向こうの
1番線に滑り込んできた東京行の快速<ムーンライトながら>を
尻目に1時13分に発車する。
いつもの日常を完全に脱出してしまった。
しあわせである。


2.ミッドナイト・サンライズ

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四国周遊切符の旅  1.旅のあとさき

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