11月11日(金)

 朝5時半に起きる。
最長片道切符の旅の続きのようだ。昨日旅して思ったことは、
特急だけではダメだということ。今更ながら再確認した。
できるだけ普通列車にも乗っておこうと思う。

 徳島駅の改札を抜けて、1番ホームへ行く。
6時14分発の徳島線・阿波池田行普通列車はすでに
入線していた。まだ夜も明けぬうち、乗客は一向に増える気配を
見せず、ぼく以外に乗客は1人という状態で発車した。
寂しくもあるが、この先で必ず高校生が乗ってくる。
ローカル線の始発列車とはそういうものだ。2ヶ月前に思い知った。
朝6〜8時は油断してはいけない時間帯なのである。

 佐古までは高徳線上を走る。
徳島線に入ると民家の脇を走ったり、収穫の終わった稲田の中を
走ったりする。鮎喰という駅に着く。
吉野川ではそんなに鮎が獲れるのかと思わされる。

 稲田には脱穀の終わった籾殻が捨てられている。
すでに晩秋の香りで車窓を彩るものがないように思われるが、
この時期には民家におもしろいものがぶら下がっている。
干し柿である。まるで簾のように民家の軒先に干してあり、
オレンジ色の窓のように見える家もあるほどだ。線路脇の木にも
たくさん実っていて、手を出せば届きそうなものさえある。

 すれ違う普通列車は盛況だなと思っていたら、
府中、石井、下浦、牛島、麻植塚、鴨島と停まり、大盛況になった。
縁起のいい名の『学』という駅に停まる。
入場券が5枚セットで『ご入学』と縁起を担いである販売されている。

 左手はずっと山肌である。
右手の讃岐山脈も近づいてきて吉野川が現れた。
四国三郎の名でたびたび氾濫を繰り返してきた川である。
そういえばどことなく福岡県の浮羽や田主丸といった筑後川の
中流域によく似ている。筑紫次郎こと筑後川に沿って走る久大本線も
このような車窓だった。成因や川の性質は同じであろう。
違うことといえばおそらくダムが少ないことだろう。
それは上流まで行ってみればわかることかもしれない。

 穴吹という駅に着く。
ちょっとした町という雰囲気で、車内の3分の1が下車する。
特急<剣山2号>とすれちがう。ここで下車して後続の特急
<剣山1号>に乗るのも悪くないが、普通列車は窓が開く。
そんな状態にあるので、駅で何かを見つけて途中下車したくなる
以外に乗り換える理由がないのである。<剣山1号>に
追い抜かれるわけでもないし、このまま阿波池田まで
行くことになりそうだ。

 貞光で高校生の90%が降りる。
同じ制服だけが降り、違う制服は残る。
わかりやすい仕掛けである。というわけで満杯だった車内は
ガラガラに近くなった。本当に油断できないものだ。
今度は残った高校生と同じ制服が増えはじめる。
阿波半田、江口、三加茂、阿波加茂でどんどん増えて、
また満杯になった。座り込みを始めた高校生もいる。
こういうときロングシートは孤立感が増幅される上に、
車窓に見入ることも身動きをとることもできなくなる。
いたたまれない気持ちになるが、いまはボックスシートに座っている
ので自身のスペースを侵されることなく窓の外に逃げられる。

 いよいよ谷が狭まってきて、吉野川に沿うようになった。
天気は曇だが、急流の雰囲気もなく川の表情が穏やかだ。
ただ、讃岐山脈の高さからして吉野川が成因であろうことは
想像に難くない。

 辻に着くと高校生のほとんどが下車した。
車掌が定期券、乗車券を階段の入口で確認している。
屋根がないので雨の日はどうするのかと思う。辻を出ると
吉野川に架かる鉄橋が見え始め、そこから線路が現れて並ぶ。

 土讃線であった。
7時58分、佃駅到着。すぐに土讃線の琴平行普通列車が
やってきた。無人駅なので車掌はホームに出て乗車券の回収も
したあとに、安全確認をしてホームの乗客、特に高校生に
列車接近を知らせている。
乗り終えて乗車完了の合図もしていたので、駅員の代役も
しているとみえる。
その後、徳島行の普通列車が到着するまで、計8分間停車した。


6.一人でも小さな旅を

8.四国三郎はおおぼけこぼけ

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四国周遊切符の旅  7.吉野川ブルーライン
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