大杉あたりで降りようかと思っていたらちょうどよく
停車したので降りる。小さな駅だが、簡易委託駅だった。
小洒落た駅である。
特急列車とすれ違ったあとに普通列車が出て行った。

 すると、まったく音がしなくなった。

 山間の静かな駅らしく、ほんの少しだけ聞こえてくるのは
駅舎からの笑い声。
そちらに行ってみると、バスを待つ人が3人、椅子に座っていた。
待合室に入ると置いてあるものはすべて大杉中学校の
生徒による手作りのもの。椅子、テーブル、ベンチ、本棚、傘立て、
時計、大杉地区の地図。そして記念写真には楽しそうな
子供たちの笑顔。思い出やいろいろなものを玄関の駅に置いて
旅立った人もいるのだろう。こうして子供たちの手によって
守られている駅も少ない。全駅に降り立ったわけではないが、
ぼくはそんな駅に出会ったことがない。

 この近くには世界一の大杉があるらしい。
行ってみようかと思ったが雨が降り出したのでやめておく。
接続よく高知行の特急<しまんと3号>がやってきたので乗り込む。
大杉駅をあとにすると、さらに吉野川を遡る。エンジンは唸り続け、
トンネルを抜けて橋を渡るかと思ったら、その鉄橋の上に
駅があった。土佐北川駅である。
結局のところ、鉄橋で川を渡ったが、駅も通過してしまった。

 <しまんと3号>は速度を緩めることなくエンジン音も高らかに
谷を駆け抜け、角茂谷、繁藤を通過してサミットを越えてしまった。
あとはとにかく下るだけだが、
振子機能を遺憾なく発揮してカーブを縫っていく。山中を抜け、
人里に出るとまもなく土佐山田に着く。さらに4分で御免に停車。
すでに高知の都市圏に入っていて、御免発車後も市街地は
尽きることなく終点・高知到着の放送が流れる。

 10時27分、高知着。
徳島や松山ほど大きな駅という印象はないが、
昔の宮崎駅によく似ている。駅弁よりもキオスクで売っていた
“カツオのタタキ”が気になったので買う。
ついでに高知名物のアイスクリンも買って食べる。
アイスクリームではなくシャーベットのようなものだった。

 高知からは普通列車ではなく特急でさらに南下する。
普通列車は翌朝にとっておこうと思う。が、1時間後の特急
<南風3号>はアンパンマン列車だった。原作者が
高知出身だからであるが、別の意味で筆舌に尽くし難い。
風情も旅情もあったものではない。
要するに気に入らないのである。車内までアンパンだらけで、
車窓に見入る集中力も失せてしまい、眠ってしまった。

 気付けば外は雨。
窪川到着5分前だった。12時45分、窪川着。
ここで下車して予土線に乗り換える。


8.四国三郎はおおぼけこぼけ

10.四万十川

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四国周遊切符の旅  9.静かな大杉駅
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