窪川まで戻ると、トイレに駆け込む。
さすがに4時間経過した上に、コーヒーを飲んでいてはトイレも近くなる。
11分後の特急<南風13号>宿毛行に乗る。17時43分に発車したが、
辺りはすでに真っ暗。灯はポツリポツリとだけ。
何も見えぬまま土佐佐賀、土佐入野に停車し、中村に着く。

 今晩の宿はここだが、宿毛まで乗り通してから戻ることにする。
中村から先は国鉄中村線として開通した区間ではなく、高知県が
土佐くろしお鉄道として開通させた区間であり、足摺岬を擁する
幡多半島の付け根を一直線に貫いている。

 中村を発車後すぐに四万十川を渡る。
下流まで来ると何とも穏やかで、先程のような深い谷を生んでいる
川とは思えない。まもなくトンネルに入り、踏切のない高架橋が続く。
11分で平田に停車。さらに5分で終点・宿毛に到着との放送が流れる。

 あっけなく着いてしまったが、高知からは
大阪に行くよりも時間がかかっていた陸の孤島である。高知南西部は
複雑で険しい地形の中にあり、土木屋を泣かせてきた。県都・高知から
2時間かかるが、これは瀬戸大橋まで渡れてしまう時間である。
なかなか興味深い。

 高架の宿毛駅に着く。
新しすぎてあまり風情のある駅とは言い難かった。折り返しとなる特急
<しまんと10号>で中村に戻った。

 中村は小京都と呼ばれている。
それもそのはず、京に住んでいた平安時代の貴族・北条基房が、
都落ちしてこの地にやってきた際、京を偲んで開いた町なのである。
それゆえに五重塔などもあり、地名には中村五条、七条などの
京を連想させるものが数多く残る。

 民宿まで歩いて10分。
途中に大型スーパーがあったので寄ることにする。今日の夕食は
鰹のタタキと決めていた。思いっきり食べたいのである。
安くておいしいタタキを手に入れるならスーパーが一番いいというのは
知っているが、今回は魚屋の前で足が止まった。
タタキが見えなくなるくらいにタマネギがのせられ、ニンニクのスライスも
のっていた。

 奥からおばあさんが出てきたので、即購入。
他にも“ハゲ”という刺身があったが、これはカワハギとわかった。
イサキかヒラスかわからない白身魚の刺身もハマチもすべて“ネイリ”と
書いてあった。“ウルメ”というものもあった。おそらくウルメイワシを
開いて塩をまぶしたものらしい。カボスが添えてあった。
1枚53円。イワシ3枚とタタキで900円のところを650円にマケてもらう。

 おばあさんの笑顔というのはどうしていつもどこでも
印象的なのかと思う。思わぬところで人情に触れた。
あとは惣菜コーナーでいも天とサラダと白ご飯を購入し、
民宿でいただくことにする。タタキは定食屋で食べるよりもよっぽど
量があって安いしうまい。スーパーか、魚屋か、どちらかを選ぶなら
魚屋で作ったものを選ぶべきである。このタタキのようにおばあさんの
手作りでなくとも、漁師が作ったものである可能性が高い。
鮮魚コーナーの刺身が劣って見えた。


11.冴えないひとりごと

13.黒潮の海は燃えて

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四国周遊切符の旅  12.小京都・中村
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