後免駅まで戻ってきて、14時08分発の特急
<南風18号>に乗り、土佐山田まで行く。ここからは
普通列車の阿波池田行に乗り換える。

 実は2日前に阿波池田から高知行の普通列車に乗り、
大杉から特急<しまんと3号>に乗り換えたが、
四国山地越えのサミットにあたる大杉〜土佐山田間の
車窓がおもしろかったので各駅停車でたどってみたく
なったのである。<南風18号>が発車したあと、
14時21分に土佐山田をあとにする。

 もう眼前には四国山地が迫っている。
土讃線は山あり谷あり海あり川あり崖あり平野ありの
至れり尽くせりの路線だから普通列車でゆっくりと
たどるのがいいらしい。

 四国山地をぐんぐん上る。
紅葉はこれからといった感じであるが、
赤く染まっている木もある。列車後方を見ると、
列車の風によって巻き上げられた落葉が舞う。
秋という季節の峠越えは躍動する自然を間近に
感じられるから好きだ。ススキは揺れ、山々は色付く。
新緑の清々しさとはまったく別の味わいがある。

 やがて上り坂の途中に分岐器が現れ、
本線から逸れた。すると行止りの線路とともにホームが
現れて新改駅に停車した。スイッチバック式の駅。
普通列車に乗りたくなった理由の一つである。

 人の姿など皆無と思えた無人駅のホームの端で、
水道の蛇口がひねってあり、ちょろちょろと水が
バケツに溜められている。水道ではなくて井戸水だろうが、
誰かいるのだろうか。

 3分ぐらい停車した後、、車掌が笛を鳴らして
ドアが閉まった。バック運転で本線を横切る。
スイッチバックだから後ろに進むとわかっていても、
やはり“おや?”というか、“おぉー!”という気持ちになる。
折り返し線に入り、再びスイッチバックして進行方向を戻す。

 本線に進入して深い山中の駅をあとにする。
この急勾配で蒸機時代は苦労したことは一目瞭然だ。
サミットの長いトンネルを抜けて国道が現れると繁藤着。
高知行普通列車と特急<南風11号>とすれ違う。

 繁藤を出ると、小さな川を渡る。
穴内川t名を変えた吉野川の最も上流の姿であった。
さらに角茂谷を過ぎ、しばらく走ると大きな鉄橋が現れて
線路が2つに分かれた。トラス鉄橋の上にある土佐北川駅。
地形の険しさからトンネルに逃げてばかりいる土讃線の
肩身の狭さを具現化したような駅だ。駅構内の端は
もう片方のトンネルに入っている。真下は吉野川で、
岩がゴツゴツゴロゴロしている。線路が高架橋だから
橋の途中にある、という駅はいくつも見てきたが
こうもまともにトラス橋の上にある駅ははじめてだった。

 土佐北川を発車しながらトンネルに入り、大杉に着く。
ここから先は土佐穴内、大田口、豊永、土佐岩原に停車。
谷という谷が次第に深さを増してゆく。

 川面のほうは水に削られた奇岩が連続するようになる。
大歩危峡である。ただ、記念撮影用のお立ち台や駐車場が
大きな岩の上に設けられているのはよくない。それも“奇岩”
には違いないが。人間が立つための岩は味気なく、
人間を歩けなくするための岩は美しい。
自然の造形というのは本来、人間の手が付けられないように
できているのではないかと本当は思う。
なのに人間は自分たちに都合のいいように
平気で改造しようとする。愚かなことだ。

 15時43分、大歩危に到着。ここで下車する。


20.室戸への道

22.南風

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四国周遊切符の旅  21.四国山地のスイッチバック
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