普通列車・鹿島神宮行は定刻に佐原駅を発車した。

成田線をたどって香取駅に着く。ここから成田線と分かれて
鹿島線に入っていくので、最長片道切符の旅は一時中断となる。

 小さな無人駅・香取を出ると、大きく左にカーブする。
長い鉄橋が見えてきた。“坂東太郎”と呼ばれてたびたび氾濫を
繰り返してきた利根川を渡るのだ。なんと川幅の広いことか。。。
そのまま高架橋をひた走り、十二郷に停車。
無人駅らしいが、高架橋の上にあり、ひなびた感じはない。
開通年の新しさから、鹿島線はローカル線の趣ではない感じがする。
踏切がないのである。

 5人が下車した十二郷を出て、しばらく水田地帯を走る。
潮来、延方と停まり、今度は北利根川を渡る。今走っていたところは
利根川の三角州であったことに気付く。
その三角州上に水郷が発達しているのだ。
一体、いくつ利根川があるのだろうか。

 さらに今度は北浦を渡る。
川ではなく、霞ヶ浦と同じく湖らしい。
こんな風にして湖を渡る場所も珍しいと思う。
ゆっくりと渡り終えると小さな市街地が見えてくる。

 15時01分、鹿島神宮着。
特急の終着駅だし、どんな駅前なのかと思ったら、
歩いて10分のところに鹿島神宮がある以外、
すばらしいほどに殺風景であった。
これはこれで何かできるのかもと思ったが、歩き回る気にもならず。

 というわけで鹿島臨海鉄道に乗ることにする。
鹿島線の列車はすべて鹿島神宮止まりであるが、JR鹿島線自体は
隣駅の鹿島サッカースタジアムまでである。
時間もあるので乗ってみよう。

 15時32分発の水戸行に乗る。
単行運転のディーゼルカーが入線してきた。
なかなか古いディーゼルカーのようだ。
鹿島サッカースタジアム駅は試合が行なわれる時のみ営業する
臨時駅である。しかし、鹿島臨海鉄道の切符そのものは
JR線を含む運賃で精算される。停車しない駅からの運賃を
清算しなくてはならず、ややこしくもある。

 鹿島神宮駅を発車すると、高架橋の上から
丘の中へと移り、トンネルに入る。電化されていることに気付く。
試合が行なわれる日はスタジアム駅まで電車が乗り入れてくるの
だろうなと思う。
抜けたところで巨大な人工構造物が現れ、スタジアムとわかる。
分岐器を渡り、境界駅である鹿島サッカースタジアム駅を通過。
これで鹿島線は乗りつぶしたことにする。

 降りられるわけもないのでこのまま気の向いたところで
途中下車することにしよう。どこがいいのかなと思いながら
外を見ると、貨物列車が停まっていた。ゆっくりと通過中の
スタジアム駅には“大洗鹿島線開業20周年”の文字があった。
この大洗鹿島線は、臨海工業地域のある鹿島地区から
成田空港へと航空機燃料を運ぶための路線である。
そのための貨物列車なのであった。

 荒野台、長者ヶ浜などに停まる。
どれも畑の中の駅で、先程まで首都にいたとは考えにくい。
走ること30分で、吸い込まれてしまいそうな風景が前方に広がり、
雑木林が開ける丘の上の小駅に停車した。
“きたうらこはん”とあった。
降りようと思わずとも足は動いていた。
ここしかない。

 鹿島サッカースタジアム駅からの追加料金480円を支払い、
ホームに降り立つとドアが閉まった。
ぼく以外降りる人はいない。ブルルンと動き出したディーゼルカーは
湖畔にある築堤の上をゆっくりと走っていった。

 本当に目の覚めるような青空と、まぶしい太陽。
そしてその太陽光が降り注ぐ北浦。その湖畔にたたずむ小さな駅。
誰もいない。国道がすぐそばにあるが、自動車の音すら遠く感じる。
時間が止まったようだった。
その風景の中で、唯一時間を伝えてくれるものは雲だけ。
雲だけが静かに流れている。
ホームに座り込んで、風景の中に溶け込むことをぼくは望んだ。



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鹿島線の旅
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