8月16日(火)

 長旅の中で今日ほど早く起きなる日もそうないはずである。
ローカル線は6時以降の列車が始発であるケースが多いからである。

 新得駅に行くと、待合室で寝ている若者が3人いた。
いわゆる“駅寝”である。野宿ではない。
トイレもあるし、雨もしのげる。ステーションホテルとでもいうべきか。
改札を抜けて3番線に行くと、ワンマンカーが停まっていた。

 根室本線・滝川行普通列車である。
5時54分に発車する。乗客はぼく以外に1人という寂しさ。
それでも運転士の案内放送は丁寧だ。感心する。

 新得といえば、帯広方面への下り列車は汽笛が聞こえてから
到着まで20分かかるという奇妙な駅であった。
それは地図を見るとわかるが、高度と距離をかせぐために
線路が大きくSカーブを描いているからである。
ただ、それは過去の話。
雄大な旧狩勝峠は日本三大車窓であった。
いまでは新しい線路に切り替わり、その車窓は失われてしまった。
北寄りにあった旧線は草に覆われている。
それだけ十勝山脈に挑む路は険しい。
身軽な普通列車といえど、エンジンを唸らせて登っていく。
連続勾配が何kmも続くのは厳しいらしく、
時速40kmを超えるのは平坦な信号場の部分だけである。

 高度はぐんぐん上がっている。植生も変化した。
エゾマツの木に囲まれていたのに、築堤から見下ろすようになった。
晴れていれば新得の町を見渡せるはずである。
SLもディーゼル特急もあえぎあえぎ登った狩勝峠。

 長いトンネルの中にある落合信号場で
石勝線と分かれると途端にローカル線らしくなり、線路が細くなった。
落合に停まったあとは「ぽっぽや」の舞台になった幾寅に停まる。
高校生が20人ほど乗ってきた。地元の大事な足なのだろう。
ホームは長い。石勝線開業前は滝川からの根室本線が
帯広・釧路方面へのメインルートであったことを暗に示している。

 その幾寅を過ぎると、右手に金山湖が見えはじめる。
すると、警笛が何度も鳴らされ、ドン!
という音がして急ブレーキがかかり、ついには停止した。
線路上にいたシカを撥ねたという。
運転士が降りて接触現場まで行き、
障害物として転がっていないかを確認して戻ってきた。
200m以上走ったようで、ご苦労様である。

 再び発車して東鹿越を過ぎると、
ぐるりと湖を巻いて渡ってしまい、トンネルを抜けて金山に着く。
山が開けて山部、布部と停車し、合わせて30人くらいが乗ってきた。
晴れていれば右手に十勝岳がその姿を現すはずだが・・・。

 平地に降りてくると富良野盆地である。
住宅が目立ってきて7時20分富良野に到着。4分で乗り換える。
富良野線・旭川行は5番線であるが、2両編成のドアが開いてない。
おかしいなと思って見ると、開いているのは運転室後ろのドアのみ。
富良野は駅員配置駅だから、ワンマン扱いでも
全部のドアを開けておくべきではないだろうか。不適切に思う。
よそものにはわかりづらい上に、階段から遠い。
車内保温のためなら、せめて3分前から全開とか、
やりようはあるように思うのだが。

 4つ目の路線・根室本線に別れを告げて5つ目の富良野線に入る。
これまでとは一変して田畑が広がり始める。
道東の荒涼とした風景や原生林とはまったく違う。
稲田が広がるが、1区画がかなり広い。
しっかりと穂をつけているから、実りの秋を迎えようとしているのだ。
まだ8月中旬だというのに。

 富良野から40分ほどで美瑛に到着。
途中下車をする。下車印を押してくれと言うと、
経由地の確認もないまま押されてしまう。
そんなに面倒くさいのかなと思う。
“富良野線”の文字を確認するだけでいいのに。
やはりこの最長片道切符、あまり向き合ってもらえないらしい。
せっかくの切符であるのに残念だ。

 美瑛駅前の商店でレンタサイクルを借りる。1時間200円。
愛馬・バルカンドリフターは名古屋に置いてあるからとはいうものの、
たまには自転車で駆けるのも悪くないかもしれないなと思う。
バルカンチャリフターに乗って、地図を片手に出発する。



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3.雨の釧路湿原

5.美瑛の丘

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最長片道切符の旅・3日目
4.狩勝峠
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