8月25日(木)

 台風11号が接近しているらしい。
なんということか。今日は早めに小山まで戻ってこなくてはいけない。
しかし、今日のメインとなる水郡線は本数が少ない。
乗車予定だった13時台の列車の前は9時台しかないのだ。
ということでやむを得ず、一番列車で佐野を出る。

 隣接する東武鉄道の佐野駅はもう目を覚ましていた。
2番線に入ってきた小山行普通電車に乗る。
なぜか、少し日常に戻されたような感覚に陥る。
景色は朝の関東平野。
どんな風景かと思えばひたすら田園風景だった。かと思えば
工場が密集していたり、研究所があったりと生活感が漂う。
そういった意味では風景は変化に富んでいると言える。
おそらく住んでいる人たちも千差万別なんだろう。
終点・小山まで田園風景が続きながら、乗ってくる人はスーツ姿。
れっきとした通勤路線である。

 6時15分、小山着。
地図上では東北本線に両毛線と水戸線が十文字に交差し、
その上に東北新幹線が通る。東海道・山陽本線と違い、
内陸を貫く東北本線にはこうした交差点が多い。
海沿いに工業地域が発達する太平洋ベルトとの違いは
この点にある。おかげさまで小山からは、
なんと5度目の東北本線である。せっかく新潟、長野と
昨日はJR西日本エリアにまで入ったのに、またしても
東北本線を“北上”しなくてはならないのである。
一筆書きのなせる業だ。

 到着した9番線の向かいに入ってきた電車に乗り込む。
中間2両はグリーン車となっている。この際だから乗ってしまおうかと
思うが、朝から贅沢はよくない。さわやかに行こう。
上野発の一番列車なので乗ったことがある。
多少なりとも勝手がわかるので、これまでよりも落ち着いていられる。
小山駅10番線を6時25分に発車する。

 宇都宮まで30分。
この間東北新幹線が寄り添っているから一直線である。
高校生が乗っていても静かだ。
どちら側の扉が開くか熟知しているから、扉のそばで寝ている。
まだ高校生なのに疲れた顔をするのはよくない。
と言っても無駄である。
大人が皆疲れた顔をしているからだ。
東北・北海道の人たちのいきいきとした様子、笑顔、日常を
見たあとではそう思わざるを得ない。
首都圏が近いのだなと思う。

 6時51分、宇都宮着。
栃木県の県庁所在地であり、ギョーザで知られる町である。
ホームで駅弁を探す。ここは日本で最初に駅弁というものが売られた
駅弁発祥の地である。その“おにぎり弁当”を求める。
が、立ち売りがいない。
半年前に来た時には威勢良く売っているおじさんがいたのに。
仕方なく、5番線の列車に乗り込む。
6時58分発の黒磯行普通電車であった。
よく見たら先頭車両の前面には“1521M”と列車番号も表示。
乗務員にはわかりやすいだろう。これも便利かもしれない。

 首都圏とは反対方向に向かっているが、適度に混んでいる。
座る場所もないので、運転室後ろへ。
関東平野の北端を突っ走っている。
前面窓は大きく、運転室も広いようで眺望はよい。
ここをグリーン車にしたらどうかと思う。

 運転士が右足をかいている。かゆいのだろう。
ズボンの裾を膝までまくっているときもあった。
運転士とて人間である。
駅に着いた時は、発車時刻までの間、一息つく場面があった。

 自分の足元が少々水びだしなのに気付く。
あっ!と思う。カバンから水がぽたぽたとこぼれている。
紅茶の紙パックから漏れているのである。
これでは小便を漏らしているみたいではないか。みっともない!
残っている紅茶を飲み干してティッシュで床を拭いておく。
そのままにしてはあとの人が困る。電車は皆のものである。
それにしてももったいない。

 那須塩原の手前で上野行寝台特急<北斗星2号>とすれ違い、
7時48分、黒磯着。上野方の電留線に直流電気機関車が、
多く停まっており、仙台方には交流電気機関車がいる。
ここは交流電化と直流電化の境界である。これまで通ってきたような
デッドセクションはなく、停車中に交直を切り換える。
ただし普通列車の場合はそんなことをせずに乗換えとなる。

 跨線橋を渡って4番ホームへ行くと、おなじみの電車。
東北地区用の701系電車であった。何度目だろうか。
横向きに座って車窓に背を向けるのは毎度毎度気が重くなる。
まったくもって悲喜こもごもである。
これで東北の最後を締めくくると意気込んで乗る。

 しかし、あろうことか眠りこけてしまう。
一番列車で出てきたこともあるが、一週間いた東北で
毎日のように乗ってきたから安心したのかもしれない。
気が付けば白河の関も越えて郡山に着いていた。
本当なら水郡線の分岐する安積永盛で降りようと思っていたのに、
1駅先の郡山まで来てしまったのである。
そのおかげで、これから乗る水郡線の列車には始発から
乗れるわけでもあるのだが・・・。

 水郡線のホームを探す。
なんと数字はふられていない。
“水郡ホーム”と名付けられているだけである。
わかりやすいんだかわかりにくいんだか・・・。
3・4番ホームの端、歩いて50mのところにあった。
それだけ乗る人も発着本数も少ない路線なのである。
停車中だった9時18分発の水戸行普通列車に乗り込む。

 乗客を20人くらい乗せて水戸行普通列車は発車した。
東北本線を5分ほど走って、安積永盛着。
ここから先が37番目の路線・水郡線となる。
この旅で乗る東北地方最後の路線である。
いよいよ東北を抜ける。



31.上越国境を越えて

33.草萌ゆる水郡線

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最長片道切符の旅・12日目
32.鈍行列車・悲喜こもごも
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