鳥取駅に着いたら改札で途中下車印をもらう。

 「うわ〜!こりゃ押し場所に困りますな。」
というだけで、経由地の確認はない。責務を果たしてほしいなと思うが、
如何せん券面は相当な様相である。やむを得まい。

 ホームに戻るためにもう一度改札を抜けるときの駅員は
違う人物で、「なんですか?こりゃあ。何日乗ってらっしゃすんですか?
これからどちらへ?」と言う。よそ者というのはわかりきったことだから、
因美線と答えた自分を丁寧に案内してくれた。しかし、そんなに興味を
持たれると照れ臭い。

 1番線に上がる。
15時28分、倉吉方から6両編成のディーゼルカーが入線してきた。
特急<スーパーはくと10号>京都行である。第3セクター・智頭急行の
車両だが、民鉄の持つ気動車の中ではおそらく最速・最強であろう。
“はくと”はもちろん因幡の白兎に由来する。鳥取には白兎海岸なる
ものもあるから妥当な名前である。

 最後尾1号車の一番後ろの席に陣取るとドアが閉まった。
驚いたことに、前面展望が各車両のモニタに映るようになっている。
しかし左右逆転して映っているような気もする。気のせいか。
後ろを見ると、運転室越しに後方の展望が楽しめる。

 鳥取駅の高架線を下りて、73番目の路線・因美線を爆走する。
大きなエンジン音が唸りを伝えている。スピード感がある。
津ノ井、東郡家を通過して郡家駅着。倉吉行の<スーパーはくと7号>
とすれ違う。登場して10年以上経つから、もう“スーパー”は付けなくても
いい気がする。鳥取より西側の山陰本線で“スーパー”を冠してないのは
<やくも>、寝台特急<出雲>、<サンライズ出雲>ぐらいである。

 郡家では1号車がはみ出した。
普段は5両編成だが、今日は3連休ということで、6両編成に増結されて
いるからだ。おかげで駅構内踏切をふさいでしまい、隣のホームに
行きたそうにしているおじさんと目が合った。

 車掌が笛を吹いて発車した。
車内改札の際に最長片道切符を見せると
「これはどういう切符ですか?因美線は・・・・あ、因美線で東津山。
はい、かしこまりました。」と言ってチケッターを押してくれた。
しかしである。
よく見ると“05.9.17 智頭急行”とある。なんとJR路線だけしか
乗れないはずの最長片道切符に第3セクターの社名が入ってしまった。
うぬぬぬ。
押されてしまったからには仕方がない。

 鳥取砂丘に砂を運んだという千代川を渡る。
鳥取市内にある河口には賀露という漁港がある。鳥取には兄がいたこと
があるので、そこで兄弟3人で釣りをしたことがある。その日は高波で
消波ブロックで砕け散った波しぶきを浴びながら楽しんでいた。
さすがは冬の日本海と思ったのをよく覚えている。小学校5年生だった。

 <スーパーはくと>は跳ぶように走る。
振子車両なのでカーブでもスピードを落とさないし、駅を通過するときも
やっと駅名が読み取れるほどである。20世紀梨の産地である河原、
国英を通過し、千代川の谷が少しずつ深くなっていく。

 窓が広いなと思う。
昨日乗った北近畿タンゴ鉄道の<タンゴディスカバリー>よりも広い。
鷹狩、用瀬、因幡社を通過して15時55分、智頭に着く。
<スーパーはくと>はここから第3セクター智頭急行線に入るので
ぼくは降りなければならない。

 智頭急行は、この智頭と山陽本線の上郡を結ぶ第3セクターである。
元々は国鉄智頭線として計画されていたが、国鉄の赤字ローカル線
廃止問題が浮上するや否や、開業しても採算が取れない地方交通線
として工事が凍結された。しかし、路盤は100%完成、あとは線路を
敷設して駅を作れば列車は走るという状況にあったため、鳥取県と
岡山県、兵庫県が出資して第3セクターを設立した。智頭急行線の
車両に描かれている“HOT”は兵庫、岡山、鳥取の頭文字である。

 下車すると、ホームの柵のところに保育園児の“垣”ができていた。
うらやましそうにこちらを見ている。発車する<スーパーはくと>に
手を振っていた。この列車は鳥取ではヒーロー的存在だという。
本当のところはどうかわからないのだが、老若男女を問わず。と聞いた。
新幹線にも通じる流線型の先頭部がそうさせているのだろう。

 智頭は杉や檜の集散地である。
どことなく山並みが落ち着いて見えるのもそのせいだろうか。
改札を出て途中下車印をもらう。
「なんじゃこりゃあ!あ、稚内からか。へぇー。」
と言われる。確かにだいぶ遠くまできたなと思う。
しかしまだまだ旅は続くのである。

 駅前の生協でいなり寿司を買っておく。
この先はローカル線ゆえに兵糧攻めには遭いたくない。



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79.寂びついた因美線

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最長片道切符の旅・24日目
78.因幡の白兎
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