8月23日(火)

 朝4時半に起きる。ほんのり明るい。
宿を出ると暖かい風が吹いていた。
夏から秋にかけての九州でよく吹いている風、熱帯低気圧の風である。
どこかに台風が来ているらしい。天気予報をチェックするのを忘れた。
この季節なら太平洋高気圧の勢力が強いので、西日本あたり、
特に九州を直撃しているのだろう。

 今日は新潟駅の一番列車に乗る。
5時18分発、28番目の路線・信越本線の長岡行普通列車である。
一番列車なので、と予想していた通り、青春18切符を持つ
鉄道ファンらしき人が何人もいる。
新宿からの夜行快速<ムーンライトえちご>到着間もない時間なのだ。

 5時38分、新津着。
乗客の半分が下車する。といっても2両編成だから大した数ではないが
下車客の大部分は磐越西線に乗り換えたようである。
今日の旅はここからはじめるべきであったが、
新潟の物産品に興味があったので新潟駅前泊とした。
柿の種やかきもちせんべい、焼酎など米に関連したものが多く、
米どころを思わせるものばかりであった。

 その米どころらしい水田は、新津を出ると右手に広がる。
が、その向こうは厚い雲に覆われていて、時折カミナリも鳴っている。
やはり低気圧があったようだ。
矢代田、加茂などの駅に停車しながら、
食器の街・東三条、三条に着く。
この辺りの風景はどこか独特なにおいがする。
東北とも北陸とも違う雰囲気が感じられるのである。
6時36分、終点・長岡に到着。

 ここからちょっとした乗り潰しを行なう。
上越線で越後湯沢に抜けると、ちょうどよく新潟行<とき303号>に
間に合って上越新幹線で新潟まで戻ってこれるのである。
こうすれば最長片道切符の旅の未乗区間として残る
上越線・越後川口〜越後湯沢間と、上越新幹線・越後湯沢〜長岡間
を乗ることができるのだ。
上越線の列車はどこかと思って探す。
あれ?ない????
おかしい。
接続2分だから出てしまったのだろうか?
そんなはずはないので改札で訊くと、大雨のために
上越線小出駅付近での危険水域を越え、冠水しているらしい。
そんなわけで新幹線振替輸送を行なっているとのことであった。

 仕方なく精算所で事情を説明し、越後湯沢までの乗車券を買う。
さらに、新幹線乗換え口で新幹線振替乗車票をもらってホームに上がる。
思わぬ形での上越新幹線の初乗りとなった。

 <Maxとき302号>で越後湯沢まで行く

 越後湯沢から長岡まで戻らなくてはならない。
もし大雨で東京からの<とき303号>が遅れていたらアウトである。
最長片道切符のスケジュールの遅れは新潟から先で取り戻せるが、
未乗路線である弥彦線に乗れない。
と思ってホームで待っていたら、定時運行との案内があった。
大雨なのは上越国境の北側だけだったらしい。

 トンネル内部が明るくなり、<とき303号>が現れた。
トンネルを抜けたら雪国だった。という雪国の一説に登場する
越後湯沢のトンネルである。この越後湯沢に寄り道をしなければ
長岡から新潟まで乗る予定の列車であったから、
29番目の路線・上越新幹線でこのまま新潟まで行くことにする。

 8時15分に発車した<とき303号>は20分ほどで長岡に着く。
けっこう乗車があった。県都新潟への通勤客らしい。
新幹線は遠くても近くも便利なようだ。
遠くの山々に雲がかかっている。が、青空が見えているところもある。
今日のルートの定時運転を願うばかりだ。
定時でなくてもいいので、今日の宿泊地・戸狩野沢温泉まで
“鉄道で”行きたいのだ。

 10分ちょっとで燕三条に停車。
さらに通勤客を吸い込んで発車する。
車掌どのが来たので新幹線自由席特急券を買う。
通常ならこの特急券がなくては新幹線改札を通れないが、
今回は新幹線振替輸送乗車票を持っているので、一緒に見せる。
「上越線不通でしたからね。ふむ、すごい切符ですな〜。
あ、上越新幹線。かしこまりました。改札でもお支払いいただけますよ。」
と言う。この際だから、この場で買っておきたいと思う。
特急券を持たずに新幹線に乗ったことが生涯なかったし、
車内発行なんてことにも滅多にならない。
振替輸送など滅多にない東海道・山陽新幹線しか乗ったことのない
自分にとって、まさに稀有な経験だったからである。

 「もう一度、乗車券見せていただけませんか?
30年以上車掌をしてますが、はじめて見る切符なので・・・。」
バッチには“主任”と書いてあった。かっこいい車掌さんも
さすがにこの切符には恐れ入ってしまったらしい。
持ってる自分だって一生に一度の切符だと思う。
「いや、すばらしい。うらやましいです。お体には気をつけて。
よい旅を!ご利用ありがとうございました。」
最後まできちんとした車掌さんだった。
昨日の磐越西線といい、新潟の車掌さんは人なつこいと言うか
親しみやすい車掌さんばかりだ。
乗客に対して自然な笑顔が出るというのは、
仕事を愛している証拠だろうと思う。
こちらがうらやましい気持ちになる。

 9時03分、新潟着。
乗換え口を通ったはずが万代口だった。
改札を抜けて街に出てしまったのである。大急ぎでホームに戻る。
ついでに改札口で途中下車印ももらう。
“新潟”の文字は新津同様にわかりにくいものだった。
駅員に対して“経由地を確認しないのか?”という問いは諦める。



22.阿賀野川

23.柏崎駅

上越新幹線の旅へ

最長片道切符の旅TOPへ



最長片道切符の旅・10日目
23.上越新幹線
SEO [PR] 爆速!無料ブログ 無料ホームページ開設 無料ライブ放送