9月9日(金)

 今日は津まで行く。
9月9日ということで救急の日らしい。
あまり旅には関係ないが、安全には配慮を怠らないようにしたい。

 津までというのは中途半端だが、明日は午前中に用事がある。
今日のうちに少しだけ乗っておきたいと思う。
11時40分発の四日市行普通列車は名古屋駅13番線から発車した。
同時発車の<エキスポシャトル>万博八草行は10両編成。
こちらは2両編成なので、あまりにも小さな存在に思えてくる。
反対側には東海道新幹線が並んでいて16両編成に1000人以上が乗る。
70番目の路線となる関西本線は大きな流れの中の小さな支流である。

 名古屋は今一番元気な町である。
愛知万博と中部国際空港・セントレアの開港でいっそう人が集まるようになった。
人からは「愛知万博にいかないのか?」と言われるが、
三十数年ぶりの万博よりも、一生に一度の旅である。
腹を決めているので万博に行かなくとも後悔はしない。
元より、人ごみは嫌いであるし。

 東海道新幹線をくぐって進路を西にとると、
右側には近鉄名古屋線が、左には名古屋臨海高速鉄道・あおなみ線が並ぶ。
あおなみ線は金城埠頭に通じているので貨物列車が走る。
近鉄名古屋線は関西本線の天敵である。
単線電化のこちらと違って複線電化で圧倒している。

 最初の駅・八田で近鉄の急行電車に追い抜かれる。
中川区の住宅地を抜けて道幅の広い第2環状線を跨ぐと春田に着く。
ここまでくると水田が見え始める。名古屋の住宅地が西に延びていかないのは
三重県がすぐそこにあること、木曽三川がはばんでいることが関係している。
県境で交通の流れが変わることは全国共通のことである。

 蟹江で名古屋行の普通列車とすれ違い、田んぼの中の永和に停車する。
のどかだ。遠くには東名阪自動車道もあるが、関係ない。
どの駅にも上下線の間に線路がある。おそらく貨物列車用の待避線である。
四日市コンビナートで陸揚げされた原油を積んだタンク車を連ねた貨物列車が
頻繁に運転されている。

 近鉄弥富線のホームと同居している弥富駅を出ると、
木曽三川のひとつ、木曽川を渡る。大きな川だ。
左手には近鉄名古屋線とその向こうに名四国道の橋が架かっている。
地形を克服する手段としてはトンネルと橋が一般的であるが、
橋は風景に溶け込むこと、トラス橋やアーチ橋は見ていて美しいことなどを
考えると、地中に潜ってしまうトンネルよりも素晴らしいと思う。

 長島駅に着く。
いつか途中下車したいと思っていた駅なので降りる。
木曽三川に囲まれた輪中という集落の中にある。
いまは土木技術が発達したので堤防が決壊することは少なくなったが、
昔は大雨の度に長良川と木曽川が氾濫していたという。
家々の母屋の2階には船が置いてあると小学校の社会科の授業で
とり挙げられていた覚えがある。

 無人の長島駅は駅舎もなく、ローカル線の小駅のたたずまいであった。
関西本線の木曽三川にかかる区間は関西本線も複線で幹線らしさを
保っているが、100mぐらい南を近鉄名古屋線が走っていて列車頻度の差が
明らかだ。関西本線の線路をくぐる地下道が設置されていて、その地下道の
出入口に“長島駅”と表札が掲げられていた。

 ホームに座り込んでぼんやり空を眺めていると
名古屋行の快速<みえ>が駆け抜けていった。その10分後にやってきた
12時33分発の普通列車・亀山行に乗る。
先ほどと同じ2両編成だが車内はいっぱいだった。
亀山行だからだろうか。

 長島を出て木曽三川の残る2つ、長良川と揖斐川を渡る。
木曽川のときと同様に連続トラス鉄橋で渡っていくと、2つの川を仕切る
堤防があり、そこを南北に道路が走っていた。
並走する近鉄線をアーバンライナーplusが走る。

 揖斐川を渡り終えると桑名に着く。
その手前で信号待ちを2分ほどする。桑名は東海道の宿場町である。
熱田神宮から亀山、関、鈴鹿山脈を越えて草津、京都を行き交った人たちが
身を休め、街道や国の情報を交換していた場所。木曽三川を船で渡るための
船宿もあっただろう。街道に沿って走る路線はその街道の歴史をどこかに
とどめているものである。桑名駅のホームにはかさ上げする前のレンガが
土台として残っており、反対側のホームから見ることができる。

 桑名から朝日に停まり、とても無人駅とは思えぬ広さの富田に停車する。
数ある側線にはタンク車と機関車が並び、コンビナートへの貨物線が
分かれている。名四国道が寄ってくる富田浜で対向列車とすれ違う。
道路と比べても輸送量の差が歴然としている。
名四国道をくぐると四日市に着いた。




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