諫早で93番目の路線・長崎本線は終りである。

 ここからは94番目の路線・大村線である。
実はこの大村線は、もともと長崎本線であった。有明海に沿った
いまのルートが開業するまでは肥前山口から武雄温泉、早岐を経て
諫早に至るルートが長崎本線だったのである。そういった経緯が
あるから、大村線と佐世保線の歴史は古い。地図を見ると、
早岐では分岐するはずの大村線が直進、佐世保方面は逆進になる。
これも長崎本線だった歴史的経緯の名残なのである。

 諫早を出ると長崎本線と分かれ、市街地を抜けて岩松に停まる。
その次の大村で乗客の大半が下車し、車内はぼく以外に3人だけ。
長崎空港の最寄り駅だからだろうか。のんびりとした車内で
くつろぎながら諏訪を過ぎ、ヤシの木がある終点の竹松駅に着く。

 駅員どのが列車を敬礼で迎えていた。
最長片道切符を見せて途中下車印をもらう。
「写真を撮られるのでしたら、あれがいいですよ。」
と指差すその先には、一輪だけ咲くハイビスカスの花があった。

 本来なら沖縄の花だろうと思うが、駅にいた地元の人は
暖かい九州ならどこでも咲くという。周りを見ればヤシの木も
フェニックスの木もあるから当然かなと思う。

 長崎行の快速<シーサイドライナー>が発車していくときも
駅員どのは敬礼して見送る。JRに分割民営化されて合理主義を
追求する前の国鉄時代に戻ったようだ。勤勉な方なのだろう。
10時59分発の快速<シーサイドライナー>佐世保行に乗るときも、
駅員どのは迎えてくれた時と同様に敬礼をしていた。

 <シーサイドライナー>はその名にふさわしく大村湾に沿って
くねくねと走る。海と線路の間に道路はなく、非電化だから
架線柱もない。すっきりと穏やかな海を眺めていられる。
大村湾の東岸にあたるこの地域は、長崎県にしてはめずらしく
海岸線の出入も少ないので、線路も波打ち際に敷かれている。

 快速なので松原、千綿を通過する。
彼杵、川棚、小串郷、南風崎まで海は続く。南風崎は早岐とともに
終戦直後の復員列車の起点だった駅らしい。その南風崎から
ヨーロッパ風の建物が見えるとハウステンボス駅に着く。
終戦の雰囲気など微塵もない。こうやってその時代の出来事が
風化していくことは避けられないらしい。
歴史として語り継がれることでしか後世には伝えられないのである。

 九州にヨーロッパの街並を作ったところで
どれだけ人を集められるのかと、テーマパークに対する疑問は
さておいて、ハウステンボス駅からは特急<ハウステンボス>が
乗り入れてくるために電化されている。

 5分で早岐に着く。
ここから最後・95番目の路線である佐世保線に入るが、ここまで
来たらJR最西端の佐世保駅まで行こうと思う。

 早岐駅で5分停車の間に途中下車印をもらい、
同じ<シーサイドライナー>に戻る。11時39分に発車すると
肥前山口に向かう線路を右に分けて、西に進路をとる。
大塔、日宇と停車して、11時52分に終点の佐世保に着いた。
駅には何やら筆書きのポスターというか、額入りのものが多く壁に
飾ってあった。何であろうか。肝心の“西”を示すものは
最西端の碑が駅前にあるだけでホームには何もなかった。

 少々ありがたみというものが薄れる。
本当に“最”が付くほど西なのかという気持ちになる。
実は知っていいたが、線路はさらに西へ延びているのである。
旧国鉄松浦線こと、第3セクター松浦鉄道の線路だ。

 乗るかどうか迷う。
しかし、1本の線路をたどってここまできたという想いがある。
ここまで来たら乗ろう。
松浦鉄道ののりばに上がった。




114.あかつきの空

   日本最西端の駅

116.最後の途中下車

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最長片道切符の旅・34日目 最終日 
115.ハイビスカスの花
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